頭にできた粉瘤(ふんりゅう)は放置NG!特徴・原因・治療法・費用まで徹底解説

頭皮は皮脂腺が多く、毛穴も密集しているため、実は粉瘤ができやすい場所の一つです。
「ただのニキビかな?」「そのうち治るだろう」と軽く考えて放置してしまうと、思わぬトラブルにつながることもあります。
ここでは、頭にできる粉瘤のサインを見逃さないための特徴、他の似たできものとの見分け方、そして確実な治療法について詳しく解説します。
頭にできる粉瘤の特徴 – 見逃しやすいサインと放置リスク

頭皮の粉瘤は、髪の毛に隠れて発見が遅れがちですが、注意深く観察すると特有のサインが見られます。放置すると炎症や感染のリスクが高まるため、早期発見・早期治療が重要です。
- 黒い点・塊ができる(開口部)
- 腫れ(炎症)・化膿・押すと痛い・かゆみ
- しこり・触ると硬い
- 中身が破裂・膿、血が出る
黒い点・塊ができる(開口部)

頭皮の粉瘤では、しばしば皮膚表面に小さな黒い点や塊として「開口部」が見られます。これは粉瘤の袋が皮膚表面と繋がっている部分で、「ヘソ」とも呼ばれます。毛穴の入り口が詰まって酸化し、黒く見えることが多いです。髪の毛で非常に見えにくい場合も多いですが、指で触れた際に小さな突起やしこりとして感じられることがあります。ご自身で確認しにくい場合は、ご家族にチェックしてもらうのも良いでしょう。この開口部から細菌が侵入し、炎症を引き起こす原因にもなり得ます。
腫れ(炎症)・化膿・押すと痛い・かゆみ

粉瘤の袋内部に細菌が侵入・増殖すると、免疫反応が起こり、炎症が始まります。これが「炎症性粉瘤」と呼ばれる状態で、患部は赤く腫れ上がり、熱感を持ち、ズキズキとした拍動性の痛みを伴うようになります。頭皮は皮脂分泌が活発で蒸れやすく、洗い残しなども細菌繁殖の一因となり得るため、比較的炎症を起こしやすい部位と言えます。初期段階では軽い違和感や、かゆみとして感じられることもありますが、放置すると炎症は悪化し、内部に膿が大量に溜まって膿瘍(のうよう)を形成し、強い痛みを引き起こします。ここまで進行すると、治療にも時間がかかることがあります。
しこり・触ると硬い

炎症を起こしていない状態の粉瘤は、皮膚の下に存在する袋(嚢胞:のうほう)の中に、本来剥がれ落ちるはずの角質や皮脂といった老廃物が徐々に蓄積して形成されます。そのため、触れると皮膚の下に弾力のある硬いしこり(腫瘤:しゅりゅう)として感じられます。大きさは数ミリ程度の小さなものから、時間経過とともに数センチ以上にまでゆっくりと成長していくことがあります。指で軽く押すと、皮膚の下でわずかに動くような感覚があるのも粉瘤の特徴的な触感です。痛みがないからといって放置していると、徐々に大きくなり、ある日突然炎症を起こすリスクを抱え続けることになります。
中身が破裂・膿、血が出る

炎症がひどくなったり、外部からの圧迫などが加わったりすると、皮膚が薄くなって破れ、内部に溜まっていた内容物が排出されることがあります。排出されるのは、ドロドロとしたお粥状、あるいはチーズ状の白色~黄白色の物質で、これは蓄積した角質や皮脂、ケラチン様物質です。これらが細菌によって分解されることで、しばしば非常に強い、独特の腐敗臭(悪臭)を放ちます。衣類や枕カバーにシミが付いて初めて気づくというケースも少なくありません。内容物が出ると一時的に腫れが引くこともありますが、原因である袋(嚢胞壁)が残っている限り、再び内容物が溜まり、高確率で再発します。 また、無理に自分で潰そうとすると、細菌感染を助長したり、袋が完全に除去できずに再発を繰り返し、結果的に傷跡が汚くなるリスクを高めるため、絶対にやめましょう。破裂した場合は、清潔なガーゼなどで保護し、速やかに医療機関を受診してください。
頭にできる粉瘤に似たできものとの違い – 自己判断は危険です!

頭皮には様々なできものが生じる可能性があります。見た目や症状が似ていても、原因や対処法が全く異なるため、自己判断はせず、必ず専門医(皮膚科・形成外科)の診察を受けましょう。
- ニキビ・角栓
- 脂肪腫
- おでき(毛嚢炎・せつ・よう)
- がん(皮膚がんなど)
ニキビ・角栓
ニキビ(尋常性ざ瘡)は、毛穴の詰まりとアクネ菌の増殖による炎症が主体です。一時的に赤く腫れたり膿を持ったりしますが、粉瘤のような明確な袋状の構造物は形成しません。角栓は毛穴に詰まった皮脂や角質の塊ですが、通常、粉瘤のように皮膚がドーム状に大きく盛り上がることはありません。
脂肪腫
脂肪腫は、皮下脂肪組織が増殖してできる良性の腫瘍です。粉瘤と異なり、皮膚表面に開口部(黒い点)は見られません。触感は粉瘤よりも柔らかく、ブヨブヨとした感触であることが一般的です。通常、痛みや炎症を伴うことは稀です。
おでき(毛嚢炎・せつ・よう)
毛嚢炎は毛穴の浅い部分の細菌感染、せつは毛穴の深い部分まで及ぶ炎症、ようは複数のせつが繋がった状態を指します。いずれもブドウ球菌などが原因の感染症で、赤く腫れて強い痛みを伴いますが、粉瘤のような袋(嚢胞壁)に囲まれた構造はありません。
がん(皮膚がんなど)
頻度は低いものの、皮膚がん(基底細胞がん、有棘細胞がん、悪性黒色腫など)が頭皮に発生する可能性もゼロではありません。「急激に大きくなった」「形が左右非対称でいびつ」「境界が不明瞭」「表面がジュクジュクしている、出血しやすい」「色が均一でない」などの特徴が見られる場合は、悪性の可能性も考慮する必要があります。疑わしい場合は、躊躇せず、速やかに専門医の診察を受け、必要であれば組織検査(生検)を受けることが極めて重要です。
頭の粉瘤の治し方:薬では根治しません!手術が唯一の根本治療

残念ながら、抗生物質の飲み薬や塗り薬は、炎症を起こした粉瘤(炎症性粉瘤)の症状を一時的に抑えることはできても、粉瘤そのものを消滅させることはできません。なぜなら、薬は粉瘤の原因である「袋(嚢胞壁)」を取り除くことができないからです。炎症が治まっても、袋が残っている限り、内部に再び老廃物が溜まり、再発を繰り返す可能性が高いのです。
頭の粉瘤を根本的に、そして再発なく治すための唯一確実な方法は、手術によって袋(嚢胞壁)を vollständig に摘出することです。
手術方法には主に「くり抜き法」と「切開法」があり、粉瘤の状態(大きさ、部位、炎症の有無)や患者様の希望(傷跡の程度など)を考慮して、医師が最適な方法を選択します。
くり抜き法(へそ抜き法)

この方法は、粉瘤の開口部(ヘソ)を中心に、直径数ミリ程度の小さな円筒状のメス(トレパン)を用いて皮膚に穴を開けます。その小さな穴から、まず袋の内容物を慎重に揉み出し、袋を空にしてしぼませます。その後、しぼんだ袋の壁をピンセットなどでつまみ上げ、丁寧に引き抜いて摘出します。
メリット: 皮膚を切開する範囲が最小限で済むため、術後の傷跡が比較的小さく目立ちにくいのが最大の利点です。手術時間も短く、身体への負担も少ない傾向があります。
デメリット: 袋の壁が脆くなっている場合や、癒着が強い場合、炎症がひどい場合には、袋の一部が取り残されてしまう可能性があり、その場合は再発のリスクが残ります。全ての粉瘤に適応できるわけではありません。
切開法
こちらは、粉瘤の大きさや皮膚のシワの方向などを考慮して、粉瘤直上の皮膚を紡錘形(葉っぱのような形)に切開し、袋(嚢胞壁)を周囲の組織から丁寧に剥がしながら、袋全体を丸ごと摘出する方法です。いわば、粉瘤を袋ごと「根こそぎ」取り除くイメージです。
メリット: 医師が袋を直接目で確認しながら確実に摘出できるため、袋の取り残しがほとんどなく、再発のリスクが最も低い、根治性の高い治療法です。炎症を繰り返している粉瘤や、比較的大きな粉瘤、くり抜き法では取りきれないと判断される場合に適しています。
デメリット: くり抜き法と比較すると、切開する長さがやや長くなるため、傷跡も少し大きくなります。しかし、形成外科医は皮膚のシワのラインに沿って切開したり、真皮縫合などの特殊な縫合技術を用いたりすることで、できる限り傷跡が目立たなくなるように最大限の配慮を行います。術後、通常は数日から1週間程度で抜糸が必要になります。
頭の粉瘤の手術費用はいくらかかるのか徹底解説

頭部の粉瘤手術は、健康保険が適用される外科的処置です。費用は粉瘤の大きさ・場所・炎症の有無・術式(くり抜き法 or 切開法)によって異なります。
とくに頭皮は「露出部」に分類されるため、顔や首と同じ区分で計算され、やや高めの設定になる点は押さえておきましょう。
3割負担の方の費用目安(保険診療)
- 直径2cm未満の粉瘤:おおよそ 8,000~12,000円前後
- 直径2cm以上4cm未満:12,000~16,000円程度
- 4cm以上の大きな粉瘤:15,000~20,000円超
※上記は手術費用の一例であり、これに加えて初診料・麻酔・薬代・病理検査費(組織検査)などがかかる場合があります。
また、炎症性粉瘤などでまず膿を出してから改めて摘出する「二段階治療」が必要なケースでは、通院回数や処置内容に応じて費用も変動します。
不安な場合は、診察時に明確な費用目安を提示してくれるクリニックを選ぶことが大切です。
胸の粉瘤に寄せられるQ&A

手術をする際、粉瘤付近の髪の毛は剃りますか?また、頭皮を切開するとそこにあった髪は生えてきますか?
はい、手術時には粉瘤の周囲1~2cm程度の髪を部分的に剃毛することが一般的です。清潔状態を保ち、手術視野を確保するために必要な処置ですが、剃毛が不要な場合もあります。
頭皮を切開しても、可能な限り毛根(毛包)を温存する方法で切開するため、多くの場合は時間とともに再び髪が生えてきます。ただし、傷の治癒過程で瘢痕(傷跡)組織が強く残った場合、その部分の発毛が弱くなることもあります。
頭の粉瘤は他の部位に比べて痛いですか?頭への注射は痛いですか?
頭の粉瘤が特別に「痛い」というわけではありませんが、頭皮は皮膚のすぐ下に骨があるためクッション性が少なく、炎症を起こした場合はズキズキとした強い痛みを感じやすいです。
また、局所麻酔の注射は頭皮に直接打つため、「チクッ」とした鋭い痛みを感じることがあります。ただし、麻酔が効けば手術中の痛みはほとんど感じません。
粉瘤は頭を洗うことで悪化しますか?
基本的に、頭を清潔に保つことは粉瘤の予防や再発防止にはプラスです。ただし、すでに炎症や感染を起こしている粉瘤に対しては、強くこすったり刺激を与えたりすると悪化する可能性があります。
洗髪は優しく、爪を立てずに指の腹で行いましょう。市販のシャンプーを使用しても問題ありませんが、赤みや痛みが強い場合は、手術前に洗髪を避けたほうが良いケースもありますので、医師にご相談ください。
手術後、美容室で髪を切る際に注意することはありますか?また生活する上で気をつけておいた方がいいことはありますか?
術後すぐの美容室利用は避けるのが無難です。傷口が完全に閉じるまで(通常は7~10日程度)、バリカンやシャンプー台での刺激、水の飛沫などが感染リスクになります。抜糸後または医師の許可が出てから行きましょう。
生活上の注意点としては以下の通りです:
- 傷口を濡らさないよう、医師の指示があるまでは洗髪を控える
- 帽子やヘルメットで蒸れないように注意する
- 汗をかいたら清潔なタオルで拭き取る
- 就寝時に枕に直接傷が当たらないよう、清潔なタオルを敷く
まとめ|頭にできた粉瘤は“見えないからこそ”放置せずに早めの相談を
頭にできる粉瘤は、髪の毛に隠れて見えづらく、知らず知らずのうちに大きくなってしまったり、炎症を起こして急激に悪化したりするリスクがあります。
「ただのニキビかな?」「触っても痛くないから大丈夫」――そう思って放置してしまうと、ある日突然破裂して膿が出る、強い痛みが出る、手術の傷が大きくなるといった問題に発展することも。
頭部は目立ちやすいだけでなく、傷跡が残ることに敏感になりやすい部位でもあります。当院では、形成外科専門医が担当し、頭皮の毛流れや傷跡の目立ちにくさまで配慮した丁寧な手術を行っています。
少しでも「頭に違和感のあるしこりがある」「何ヶ月も変わらない塊がある」と感じたら、それが粉瘤のサインかもしれません。早期発見・早期治療で、痛みや傷跡を最小限に抑えることが可能です。
頭皮に関するお悩みは、ぜひ専門の形成外科へお気軽にご相談ください。