古林形成外科-札幌院

医療コラム

耳の後ろにしこりができた!疑われる病気と正しい受診先

耳の後ろにしこりができると、

  • 「粉瘤?」
  • 「リンパの腫れ?」
  • 「まさか悪性のできものでは…?」

と心配になる方も多いのではないでしょうか。耳の後ろは皮脂腺が多く、

粉瘤や脂肪腫ができやすい一方で、

リンパ節の腫れや中耳炎の合併症、

まれには白血病や腫瘍性疾患が原因となることもあります。また、ストレスや皮膚トラブルなど日常的な要因によってもしこりが生じることがあります。

本記事では、耳の後ろにできるしこりの主な疾患や原因、症状の特徴(痛み・熱・可動性など)を整理し、どの診療科を受診すべきかまで、専門的な視点でわかりやすく解説します。見落としやすい症状のサインを正しく理解し、早期に適切な対応をとるための参考にしてください。

耳の後ろにできるしこりの代表的な疾患

  • 粉瘤(ふんりゅう)
  • 脂肪腫
  • リンパ節炎
  • 乳様突起炎
  • 白血病(急性・慢性)
  • 耳下腺腫瘍
  • 副耳(ふくじ)

粉瘤(ふんりゅう)

粉瘤は、皮膚の下に袋状の構造(嚢胞)ができ、角質や皮脂がたまることで生じる良性腫瘍です。耳の後ろは皮脂腺が多く、髪やマスクの刺激が加わりやすいため、粉瘤ができやすい部位のひとつです。

はじめは無症状で、指で触れると弾力のあるしこりとして感じます。中心に黒い点(開口部)が見えることもあり、これが粉瘤の特徴のひとつです。

しかし、感染すると赤く腫れ、押すと痛みが出る「炎症性粉瘤」へと進行。膿がたまり、悪臭のある内容物が出ることもあります。無理に潰すと悪化や再発の原因になるため、放置せず形成外科などで適切に摘出することが重要です。

【画像あり】耳にできた治らないしこり、それ「粉瘤(ふんりゅう)」かもしれません>>

脂肪腫

脂肪腫は、脂肪細胞が増殖してできる柔らかい良性腫瘍で、耳の後ろのような皮下脂肪のある部位にも発生します。一般的にゆっくりと大きくなり、痛みはほとんどありません。

触れるとぷにぷにとした弾力があり、皮膚の下で滑らかに動くのが特徴です。圧迫感が出ることはあっても、炎症や膿の排出は見られず、粉瘤とは異なり黒い点(開口部)もありません。

しこりが柔らかく可動性があり、痛みがない場合は脂肪腫の可能性が高くなりますが、診断は視診・触診に加え、必要に応じて画像検査や病理診断で確定します。

当院の脂肪腫の治療>>

リンパ節炎

耳の後ろには浅頸リンパ節や乳様突起周囲リンパ節が存在し、風邪や中耳炎、咽頭炎などの感染症に反応して腫れを生じることがあります。この状態が「リンパ節炎」です。

発症初期は軽い腫れや違和感のみですが、進行すると腫れが硬くなり、触れると痛みを感じるようになります。炎症の程度によっては皮膚が赤くなったり、圧痛が強く出ることもあります。高熱や全身のだるさ、複数のリンパ節が同時に腫れるといった全身症状を伴うケースでは、全身性の感染症やウイルス疾患(EBウイルス、風疹など)も疑われます。

粉瘤や脂肪腫と異なり、リンパ節炎は急速に腫れる傾向があり、短期間での変化が目立つ点が特徴です。

乳様突起炎

乳様突起炎は、側頭骨の後部に位置する乳様突起(にゅうようとっき)という骨の空洞部分が、中耳炎の炎症波及によって感染することで起こる疾患です。特に小児に多く見られますが、大人でも繰り返す中耳炎が背景にあると発症することがあります。

主な症状は、耳の後ろの強い腫れと圧痛、耳介の前方への突出、発熱、全身倦怠感など。進行すると膿瘍形成や骨破壊が起こり、最悪の場合、髄膜炎や脳膿瘍、さらには顔面神経麻痺などの重篤な合併症に至ることもあります。

耳の後ろにしこりがあり、なおかつ発熱や耳の痛みが続く場合は、単なる粉瘤やリンパ節炎ではなく、乳様突起炎の可能性も考慮すべきです。CTなどの画像検査と耳鼻咽喉科での精密な診断が必要とされます

その他の疾患

耳の後ろにしこりができた場合、頻度は低いものの以下のような疾患の可能性も否定できません。特に左右対称に複数のしこりがある、全身症状を伴う場合などは、慎重な鑑別が求められます。

白血病(急性・慢性)

白血病は血液のがんであり、リンパ系や骨髄で異常な細胞が増殖する病気です。特にリンパ性白血病では、全身のリンパ節が腫れる症状が出ることがあり、耳の後ろのリンパ節がしこりとして触れることがあります。発熱、倦怠感、出血傾向などの全身症状を伴う場合は注意が必要です。

耳下腺腫瘍

耳の下~後ろにかけて存在する耳下腺に腫瘍が発生することがあります。良性(多形腺腫など)が多いですが、まれに悪性の腺様嚢胞癌なども存在します。しこりが徐々に大きくなり、顔面神経麻痺(口元のゆがみなど)を伴う場合は、早期の耳鼻咽喉科受診が必要です。

副耳(ふくじ)

副耳は、生まれつき耳の周辺にできる小さな皮膚突起で、先天奇形の一種です。耳の前や後ろにイボのように存在し、皮膚色または黒ずんだ色をしていることがあります。ほとんどは無症状ですが、炎症を起こすと腫れてしこりのように感じられるため、粉瘤と誤認されやすいことがあります

耳の後ろにしこりができる原因

  • ストレスや免疫力の低下
  • 皮膚のトラブル
  • 子供の発達

ストレスや免疫力の低下

ストレスや睡眠不足、過労などで免疫力が低下すると、耳の後ろのリンパ節が腫れてしこりとして現れることがあります。風邪や中耳炎などの軽い感染症でも反応が起きやすく、痛みを伴う場合もあります。

また、皮膚の代謝が乱れることで、毛穴に皮脂や角質がたまりやすくなり、粉瘤の原因になることもあります。生活習慣の乱れが、思わぬ形でしこりとして現れることもあるため注意が必要です。

皮膚のトラブル

耳の後ろは、マスクのひもや眼鏡のつるなどが当たりやすく、摩擦や圧迫によって皮膚が刺激され、炎症や粉瘤ができることがあります。また、皮脂腺が多いため、毛穴が詰まりやすく、ニキビや粉瘤の原因となります。

子供の発達

子供の場合、耳の後ろのリンパ節が一時的に腫れることがあります。これは、免疫系が発達する過程でよく見られる現象で、特に風邪や感染症の後に起こることが多いです。通常は数週間で自然に治まりますが、長期間続く場合や他の症状を伴う場合は、医師の診察を受けることをおすすめします。

耳の後ろのしこりの症状と特徴

耳の後ろにできるしこりの症状や特徴は、原因となる疾患によって異なります。以下に主な症状をまとめます。

耳の後ろのしこりの症状

  • 痛みの有無
  • かゆみ
  • 熱感
  • 硬さ
  • 可動性
  • 色の変化や分泌物

痛みの有無

粉瘤や脂肪腫は通常無痛ですが、感染を伴うと痛みが生じます。リンパ節炎や乳様突起炎は痛みを伴うことが多いです。

かゆみ

皮膚の炎症やアレルギー反応によって、かゆみを感じることがあります。

熱感

感染や炎症がある場合、患部が熱を持つことがあります。

硬さ

脂肪腫は柔らかく、粉瘤はやや硬い感触があります。リンパ節炎では、腫れたリンパ節が硬く感じられることがあります。

可動性

脂肪腫や粉瘤は皮膚の下で動くことがありますが、リンパ節炎や乳様突起炎では動きにくいことがあります。

色の変化や分泌物

感染を伴う場合、皮膚が赤くなったり、膿や血が出ることがあります。

耳の後ろにしこりができた場合の受診先

耳の後ろにしこりができた場合、以下の診療科を受診することをおすすめします。

耳鼻咽喉科

耳や鼻、喉の疾患を専門とする診療科で、リンパ節炎や乳様突起炎などの診断・治療を行います。

形成外科

皮膚や皮下組織の手術を専門とする診療科で、粉瘤や脂肪腫の手術を行います。

皮膚科

皮膚の疾患を専門とする診療科で、粉瘤や脂肪腫などの診断・治療を行います。

症状が軽度であっても、自己判断せず、専門医の診察を受けることが重要です。特に、しこりが急速に大きくなる、痛みが強い、発熱を伴うなどの症状がある場合は、早急に受診してください。

まとめ

耳の後ろにできるしこりには、粉瘤や脂肪腫、リンパ節炎、乳様突起炎など、さまざまな原因が考えられます。

症状やしこりの特徴を観察し、適切な診療科を受診することが大切です。

早期の診断と治療により、症状の悪化を防ぐことができます。少しでも異変を感じたら、専門医に相談しましょう。

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北海道皮膚のできものと粉瘤クリニック古林形成外科 札幌院

北海道皮膚のできものと粉瘤クリニック古林形成外科 札幌院では、皮膚疾患を専門とする日本形成外科学会認定の形成外科専門医が診療を担当しています。当院では、粉瘤、脂肪腫、眼瞼下垂、耳垂裂などの疾患に対応した日帰り手術をはじめ、形成外科全般の診療を行っています。

北海道皮膚のできものと粉瘤クリニック古林形成外科 札幌院では、皮膚疾患を専門とする日本形成外科学会認定の形成外科専門医が診療を担当しています。当院では、粉瘤、脂肪腫、眼瞼下垂、耳垂裂などの疾患に対応した日帰り手術をはじめ、形成外科全般の診療を行っています。

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