背中にできるできものの違いを形成外科専門医が解説

背中は視界に入らないので、知らずのうちにできものができやすい部位です。
今回は、背中にできるできものの違いを形成外科専門医が解説していきます。
「現在、背中にできものがある」という方は、以下のものに当てはまる可能性があるので、ぜひ参考にしてください。
背中にできるできものの違い

- ニキビ(尋常性ざ瘡)
- 角栓(コメド)
- 粉瘤(アテローム)
- 脂肪腫(リポーマ)
- おでき(せつ・よう)
- がん(皮膚がん・脂肪肉腫など)
順に解説していきます。
ニキビ(尋常性ざ瘡)

ニキビは、皮脂腺が活発な部位の毛穴に角質や皮脂が詰まり、そこへアクネ菌(Cutibacterium acnes)が繁殖することで引き起こされる慢性炎症性疾患です。多くは皮膚の表層にとどまり、小さな赤みや膨らみとして現れ、数日から1週間程度で自然に治癒するケースが一般的です。
また、ニキビはホルモンバランスやストレス、食生活、スキンケアなどの影響を受けやすいのに対し、粉瘤は慢性的に存在する袋の中に老廃物が蓄積される構造的な病変であるため、時間の経過とともに確実に大きくなり、自然には消えません。ニキビと見た目が似ていても、症状の持続性と構造の違いから適切な診断が重要となります。
角栓(コメド)

角栓は、毛穴の出口に皮脂や角質が詰まってできる小さな栓状の構造物で、いわゆる「白ニキビ(閉鎖面皰)」や「黒ニキビ(開放面皰)」の原因となります。皮膚表面から見ると、白くプツっと盛り上がっていたり、黒ずんで見えることもありますが、これは酸化した皮脂やメラニンによるもので、皮膚病変としてはごく浅い層に限局した一過性のものです。
見た目が粉瘤と似ていることがありますが、角栓には皮膚内部に袋状の嚢胞構造が存在しないという決定的な違いがあります。角栓は正しいスキンケアや洗顔、角質ケアで改善可能なことが多く、数日~数週間で自然に解消するケースもあります。
粉瘤(アテローム)

粉瘤は皮膚の下にできる“硬いしこり”として自覚されることが多いのが特徴です。触れるとコリコリとした感触があり、しっかりと内部に何かが詰まっているような感触があります。
特に注意すべきなのは、しこりの中央に小さな黒い点(開口部)が見える場合です。これは、皮膚の表面とつながった開口部で、粉瘤特有の構造です。
この穴から内容物(皮脂や角質のかたまり)が出てくることもあり、特有のにおいがすることもあります。
ニキビや脂肪の塊と誤解されやすいものの、粉瘤は皮膚の奥に袋状の構造(嚢胞)が形成されている点が大きな違いです。そのため、一時的に小さくなっても、袋が残っていれば再発します。
脂肪腫(リポーマ)

脂肪腫は、皮下脂肪が増えてできる良性の腫瘍で、背中にできやすい代表的なできもののひとつです。触ると柔らかく、皮膚の下で少し動くような弾力のあるしこりとして感じられます。皮膚表面には黒い点や赤みがなく、見た目では気づきにくいため、他人に指摘されて初めて発見されることもあります。
痛みはほとんどなく、炎症や感染を起こすことはまれですが、大きくなると圧迫感や違和感が出る場合もあります。数年かけてゆっくりと成長するため、自然に小さくなることはなく、治療には手術による摘出が必要です。
おでき(せつ・よう)

おできは、毛包や皮脂腺に細菌が感染して起こる急性の化膿性炎症です。背中のように皮脂分泌が多く蒸れやすい部位では、特にできやすくなります。赤く腫れて強い痛みを伴い、数日以内に膿がたまり、中央が盛り上がって自然に破れることもあります。
粉瘤との違いは、急速に腫れること、袋状の構造を持たないこと、自然に治癒することがある点です。ただし、膿が残ると炎症が長引く場合もあり、必要に応じて切開や抗生剤による治療が行われます。
がん(皮膚がん・脂肪肉腫など)

皮膚がんや脂肪肉腫などの悪性腫瘍は、初期には粉瘤や脂肪腫と似たようなしこりとして現れることがありますが、短期間で急激に大きくなること、しこりの形がいびつで硬いこと、色調の変化や出血・潰瘍を伴うことが特徴です。
特に、触れて痛みがないのに急に大きくなってきた、表面がただれてきた、血がにじむなどの症状がある場合は注意が必要です。粉瘤との鑑別が難しいケースもあるため、数週間経っても治らない・変化が続くようなしこりがある場合には、早めに皮膚科または形成外科を受診し、必要に応じて画像検査や病理検査を受けることが重要です。
まとめ
今回は背中にできる様々な疾患(できもの)について解説してきました。
当院でも、背中の疾患が進行しているのにも関わらず気づくのが遅れ、悪化した状態で来院される患者様が多いです。
「これって何かの病気かも?」と思ったら、後回しにせずにクリニックへ早めに受診すると、体への負担が少ない治療で済みます。