古林形成外科-札幌院

医療コラム

肩のしこりは脂肪腫?原因・治療・手術費用と放置リスクを形成外科専門医が解説

肩にしこりができ、

  • 触ると柔らかい
  • 徐々に大きくなってきた

と感じたら、それは脂肪腫の可能性があります。

肩は、

衣類やカバンのストラップ日常動作によって刺激を受けやすい部位であり、脂肪腫ができやすく、悪化もしやすい場所のひとつです。

本記事では、肩に脂肪腫ができる具体的な原因、放置による影響、手術による治療の流れや費用など、よくある疑問に専門的視点から丁寧に回答していきます。

症状が軽いうちに正しく対処することで、再発や大きな手術を防ぐことが可能です。気になるしこりがある方は、ぜひ最後までご覧ください。

肩に脂肪腫ができる原因

  • 外部からの刺激
  • 生活習慣病との関連
  • 遺伝的要因

順に解説していきます。

外部からの刺激

肩は日常的に,

  • 衣類の縫い目
  • リュックサックやショルダーバッグのストラップ
  • 下着の締めつけ

など、さまざまな外的刺激を受けやすい部位です。これらの慢性的な摩擦や圧迫が皮下組織に微細な損傷や血流の変化を引き起こし、脂肪細胞が局所的に増殖するきっかけとなることがあります。

特に、肩の皮膚下には比較的厚い脂肪層があるため、増殖した脂肪細胞が周囲に広がって“腫瘤(しゅりゅう)”状に蓄積しやすく、それが脂肪腫(リポーマ)として認識されるようになります。

また、

  • 同じ側の肩にいつもバッグをかける
  • 重い荷物を片側ばかりで持つ

といった“片側負荷のクセ”がある人では、特定の部位に繰り返し刺激が加わることで脂肪腫ができるリスクが高まります。

生活習慣病との関連

糖尿病や高血圧、肥満といった生活習慣病を抱える方は、脂肪腫(リポーマ)ができやすい体質にあることが指摘されています。これは、これらの疾患に共通する「脂質代謝異常」が脂肪細胞の異常な増殖を引き起こすためです。

脂肪腫は良性の腫瘍ではありますが、脂肪細胞が本来の調整機能を逸脱して局所的に増殖してしまう病態です。とくに、

  • 内臓脂肪が多い方
  • 中性脂肪値が高い方

は、皮下脂肪組織でも同様の代謝異常が起こりやすく、肩のような皮膚が比較的厚く負担のかかりやすい部位に脂肪腫が形成されることがあります。

また、糖尿病のある方は組織修復機能も低下しており、些細な炎症や刺激からの反応が過剰に持続しやすく、それが脂肪腫の形成に拍車をかけるケースもあります。

遺伝的要因

脂肪腫は、体質的・遺伝的な背景によって発生するケースも少なくありません。とくに「家族性多発性脂肪腫症(familial multiple lipomatosis)」と呼ばれる遺伝性疾患では、10代後半から成人期にかけて、

  • 背中
  • 太もも

などに複数の脂肪腫が出現するのが特徴です。

この疾患は常染色体優性遺伝の形式を取ることが多く、親や祖父母に同様の症状がある場合は注意が必要です。できる脂肪腫は柔らかく、通常は痛みを伴いませんが、数が多くなると見た目や日常生活への影響が無視できなくなります。

また、家族性でなくとも、体質的に脂肪細胞の増殖が起こりやすい方もおり、同一部位に繰り返し脂肪腫ができることもあります。肩は荷物の圧迫や筋肉の動きが多い場所であるため、もともと脂肪腫ができやすい体質の方にとっては、特に注意すべき部位といえるでしょう。

肩に脂肪腫ができることで起こる弊害

  • 肩こりや筋肉の緊張
  • 衣服との摩擦による不快感

肩こりや筋肉の緊張

肩にできた脂肪腫が肥大化すると、その周囲の筋肉や軟部組織、さらに神経にまで影響を及ぼすことがあります。とくに僧帽筋や肩甲挙筋など、首から肩にかけて走行する筋肉の可動域が制限されることで、筋肉の張りやこわばりが慢性化し、「原因不明の肩こり」として自覚されることも少なくありません。

また、脂肪腫は通常ゆっくりと大きくなるため、日常の姿勢や動作が無意識に制限され、結果として左右の筋バランスが崩れることもあります。とくに長時間のデスクワークや同じ姿勢での作業が多い方は、脂肪腫による筋緊張と相まって、頑固な肩こりや首こりを感じやすくなる傾向があります。

衣服との摩擦による不快感

肩にできた脂肪腫は、日常的に衣類や下着、バッグのストラップと接触しやすい部位にあるため、摩擦や圧迫による不快感が生じやすいのが特徴です。とくに女性の場合、ブラジャーやキャミソールのストラップがちょうど脂肪腫の上に重なることで、局所に圧力がかかり、赤みや軽い炎症、時に圧痛を伴うこともあります。

また、夏場など皮膚が蒸れやすい時期は、摩擦によって皮膚が刺激されやすく、炎症性変化を起こすリスクも高まります。稀に、脂肪腫の表面が擦れて皮膚に色素沈着が生じたり、繰り返す刺激で被膜が厚くなって硬く感じるようになることもあります。

肩の脂肪腫の治療方法

脂肪腫は自然退縮することはほとんどなく、根本的な治療には外科的な手術(切除術)が必要です。肩は筋肉や神経が集中する部位のため、単純な「しこり」として放置せず、的確な診断と治療が求められます。

治療では、局所麻酔下での摘出手術が標準的であり、日帰り手術で対応可能なケースが大半です。皮膚を小さく切開したうえで、脂肪腫とそれを包む線維性被膜を一塊で完全に摘出することが重要です。この被膜が残存すると、同部位に再発する可能性が高まります。

また、肩の脂肪腫は僧帽筋や肩甲挙筋、神経走行との位置関係により、痛みや運動制限を伴うことがあるため、症状がある場合や、サイズが3cm以上に拡大してきた場合には積極的な摘出がすすめられます。

術後は縫合し、必要に応じてガーゼ保護や抜糸が行われますが、術後の安静期間は比較的短く、数日で通常の生活に戻ることができます。美容面が気になる場合には、皮膚のシワや緊張線に沿った切開を行うことで、傷跡をできる限り目立たないように配慮することも可能です。

肩の脂肪腫の手術費用

脂肪腫の手術費用は、腫瘍の大きさや部位によって異なりますが、健康保険が適用されます。一般的な費用の目安は以下の通りです(3割負担の場合):

  • 3cm未満:4,000~5,000円程度
  • 3cm~6cm未満:10,000~11,000円程度
  • 6cm以上:12,000~14,000円程度 

これらの費用に加えて、初診料、検査料、病理検査料などが別途必要になる場合があります。

肩の脂肪腫に関するQ&A

Q1. 肩の脂肪腫が大きくなりすぎると、全身麻酔での手術になりますか?

A. 一般的には局所麻酔で対応可能ですが、脂肪腫が非常に大きい場合や筋肉の深部に及んでいる場合は、全身麻酔が必要となることがあります。

Q2. 肩の脂肪腫は何科に行くべきですか?

A. 脂肪腫の診断と治療は、形成外科または皮膚科で行われます。特に手術が必要な場合は、形成外科の受診をおすすめします。

Q3. 肩にしこりがありますが、脂肪腫か粉瘤の違いは何ですか?

A. 脂肪腫は柔らかく、皮膚の下で動くしこりで、通常痛みはありません。一方、粉瘤は皮膚の下に袋状の構造ができ、内部に角質や皮脂が溜まることで形成され、炎症を起こすと赤く腫れ、痛みを伴うことがあります。

Q4. 肩の脂肪腫は放置するとがん等に悪性化しますか?

A. 脂肪腫は良性腫瘍であり、通常は悪性化することはありません。ただし、急速に大きくなる場合や痛みを伴う場合は、悪性腫瘍の可能性もあるため、早めに医療機関を受診してください。

Q5. 肩の脂肪腫の手術後、運動や入浴はどれくらい空けた方がいいですか?

A. 手術後の運動や入浴は、医師の指示に従ってください。一般的には、術後1週間程度は激しい運動や長時間の入浴を控えることが推奨されます。

まとめ

肩にできる脂肪腫は、初期には無症状であることが多いですが、放置すると大きくなり、肩こりや衣服との摩擦による不快感を引き起こすことがあります。

脂肪腫は自然に消えることはなく、根本的な治療には外科的な摘出が必要です。早期に医療機関を受診し、適切な診断と治療を受けることが大切です。

この記事を書いた人

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北海道皮膚のできものと粉瘤クリニック 札幌院 院長 荻野 航太

北海道皮膚のできものと粉瘤クリニック古林形成外科 札幌院では、皮膚疾患を専門とする日本形成外科学会認定の形成外科専門医が診療を担当しています。当院では、粉瘤、脂肪腫、耳垂裂などの疾患に対応した日帰り手術をはじめ、形成外科全般の診療を行っています。

北海道皮膚のできものと粉瘤クリニック古林形成外科 札幌院では、皮膚疾患を専門とする日本形成外科学会認定の形成外科専門医が診療を担当しています。当院では、粉瘤、脂肪腫、耳垂裂などの疾患に対応した日帰り手術をはじめ、形成外科全般の診療を行っています。

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