粉瘤(アテローム)とは
粉瘤とは、皮膚の下に形成された袋状の組織内に老廃物がたまる良性腫瘍です。「アテローム」や「表皮嚢腫(ひょうひのうしゅ)」とも呼ばれており、顔や首、背中、耳の後ろなどに好発します。
大きなニキビと間違えられることがありますが、粉瘤は自然治癒せず、時間とともに大きくなるのが特徴です。粉瘤は袋状の組織内に老廃物がたまることが原因であるのに対し、ニキビは毛穴の詰まりによって起こります。
初期段階では数ミリ程度の小さな隆起として現れ、触れると小さなしこりのように感じます。痛みやかゆみはほとんどありません。
粉瘤を放置すると徐々に拡大し、皮膚の隆起が目立つようになります。進行すると、触れたり押したりすると特有の悪臭を放つことも珍しくありません。
細菌感染により炎症が起きると、以下のような症状が現れることがあります。
これらの症状が現れた場合、早急に膿を取り出すための処置が必要です。根本的な治療としては、袋状の組織を完全に除去する摘出手術が行われます。
動画解説|粉瘤とは
粉瘤の症状
粉瘤の初期段階では痛みやかゆみがないため、背中などの見えにくい箇所にできると、大きくなるまで気付かないケースも多いです。顔や首など目立つ部位であれば、早期発見が可能です。
また、小さなしこりや炎症による腫れがある場合、単なるニキビと誤解されることも珍しくありません。
粉瘤には、ニキビにはない特徴があり、その一つが独特の臭いです。また、粉瘤は自然治癒せず、中にたまった老廃物が蓄積して巨大化することがあります。(場合によっては、数十センチに達することもあります。)
粉瘤による痛み
粉瘤が細菌感染や内部でつぶれて炎症を起こすと、「炎症性粉瘤」と呼ばれる状態になります。
通常、粉瘤に目立った症状はありませんが、炎症が起こると化膿して痛みや腫れを伴うことがあります。
炎症性粉瘤は、排膿処置や抗生物質投与などの治療によって痛みは軽減できますが、このような治療は対症療法に過ぎません。粉瘤の袋状の組織は残るため、再発のリスクがあります。
一度化膿した粉瘤は再発しやすい傾向にあるため、完治するには皮下の袋状の組織を完全に取り除く摘出手術が必要です。
粉瘤の原因
粉瘤の発症原因
粉瘤の原因は、明確に解明されているわけではありません。しかし、ほとんどの粉瘤はウイルス感染や皮膚の外傷などの要因によって発症すると考えられています。
粉瘤は、皮膚の表皮成分が皮下に埋入することで発症するとされ、この過程で袋状の組織(嚢腫)が形成され、その中に垢や皮脂などの老廃物が蓄積していきます。
初期段階では小さなサイズのしこりができる程度ですが、そのまま放置すると徐々に拡大し、目立つようになります。さらに、不快な臭いを発したり、細菌感染によって炎症を引き起こしたりする可能性もあります。
一度嚢腫が形成されると症状が悪化しやすくなるため、手術による完全な摘出が必要です。
炎症を起こす理由
粉瘤は、炎症によって赤く腫れ上がり、痛みを伴うことがあります。
これまでは、粉瘤が炎症を起こす主な理由として細菌感染が考えられていましたが、実際は嚢胞内の老廃物が皮膚内部に広がることで炎症が起こるケースの方が多いとされています。
炎症の原因によって治療方法は異なります。
細菌感染が原因でない炎症には、抗生物質は効果がないため、速やかな手術が必要となります。
ただし、細菌感染が合併している可能性もあるため、治療では手術と抗生物質の併用が行われることもあります。
粉瘤は早期からの治療が重要
粉瘤を根本的に治療するには手術が必要なため、医療機関への早期受診が重要です。無理な処置は炎症のリスクを高める恐れがあるため、自己判断での治療は必ず避けましょう。
皮膚に違和感を覚えた場合、粉瘤の可能性を疑う必要があります。粉瘤はニキビや吹き出物と似ていますが、自然治癒は期待できません。大きくなると治療が困難になり、特有の不快な臭いが発生することもあります。
早期に医療機関を受診し、適切な診断と処置を受けることで、このような問題を未然に防ぐことが可能です。
粉瘤の治療(手術)は保険適用
粉瘤の治療は、診断から手術、病理検査に至るまで、健康保険や公費の適用対象となります。
また、個人で加入している医療保険によっては、手術給付金が受け取れる場合があります。詳細は保険会社にお問い合わせください。
粉瘤の治療
手術方法には、主に以下の2つの選択肢があります。
当院の粉瘤摘出手術では、局所麻酔時の不快感や痛みを最小限に抑えるため、極細の注射針を使用するのが特徴です。症例によっては、皮膚と組織の分離を容易にするため、局所麻酔後に生理食塩水を注入する方法を実施することがあります。
動画解説|粉瘤の治療
くり抜き法
くり抜き法とは、粉瘤内部の老廃物を絞り出した後、袋状の組織(被膜)を除去する手術方法です。具体的には、トレパン(円筒状のメス)や通常のメスを使用して粉瘤のある皮膚に小さな穴を開け、そこから内容物を絞り出した後、被膜を丁寧に取り出します。
この方法は皮膚の切開を最小限に抑えられるため、術後の傷が目立ちにくいのがメリットです。また、手術にかかる時間は5〜20分と短く、患者様への身体的負担が少ない点も魅力の1つです。
手術の流れ
STEP1
アプローチ部位にペンでマーキングを行い、腫瘍まわりに局所麻酔を施します。
STEP2
トレパンやメスを使用し、粉瘤がある皮膚に小さな穴を開けます。
STEP3
被膜にたまっている老廃物を絞り出します。
STEP5
止血後、切開した傷口を縫合します。※傷あとをきれいにするため、形成外科的縫合が行われます。
動画解説|くり抜き法による粉瘤手術
切開法
切開法は、粉瘤の上の皮膚を切開し、粉瘤全体を取り除く方法です。この手術の特徴は、以下のようなさまざまな状態の粉瘤に対応できる点です。
くり抜き法と比較すると、切開範囲が広くなるものの、再発のリスクが低い傾向にあります。そのため、患者様の状態に応じて切開法が選択される場合もあります。
手術の流れ
STEP1
切開箇所にペンでマーキングを行い、腫瘍まわりに局所麻酔を施します。
STEP3
粉瘤にたまっている老廃物をきれいに取り除きます。
STEP4
被膜を剥がし、そのまま粉瘤を摘出します。
STEP5
皮膚に余計なシワが生まれないように、切開部位を調整します。
STEP6
十分に止血した後、切開した部位を縫合します。※傷あとをきれいにするため、形成外科的縫合が行われます。
動画解説|切開法による粉瘤手術
当院の粉瘤治療の流れ
電話またはホームページのWEB予約から、受診の予約が可能です。
粉瘤と思われる腫瘍が、実は別の疾患である可能性もあります。そのため、手術の適応については慎重に検討します。
腫瘍の大きさや位置、過去の炎症歴、患者様のご希望などを考慮し、具体的な治療方針をご提案いたします。
診察によって決定した治療方針に基づき、日帰り手術で治療を行います。
手術後の注意点は以下の通りです。
手術後の注意点
創部のケア
手術直後は、傷口にガーゼを当てた状態でお帰りいただきます。
手術後1〜3日ほどは、血液や体液でガーゼが滲みやすくなるため、毎日新しいものに取り替えてください。その際、シャワーで創部を洗い流しても問題ありません。血液や分泌物が止まったら、ガーゼからテープに変更してください。
入浴
手術翌日からシャワーでの入浴が可能です。ただし、浴槽での入浴は感染リスクがあるため、抜糸するまでは控えてください。
運動
創部の場所や運動内容によって、制限の有無が異なります。詳細については手術後にご説明いたします。
飲酒
アルコールを摂取すると血行が良くなり、血腫(血のたまり)ができやすくなる恐れがあります。手術当日と翌日のアルコール摂取は控えてください。
術後の合併症・副作用
傷あと
手術では患者様の負担を最小限に抑え、できる限り傷あとが目立たないよう心がけていますが、粉瘤のサイズや状態、発症部位によっては傷が残る可能性があります。
盛り上がりや硬さ
手術後の傷あとには、時間とともに変化が見られます。最初の2〜3週間で肉芽組織が増殖し、傷あとが盛り上がり、触れると硬くなることがあります。これは身体が自然に傷を修復しようとする反応です。
3カ月ほど経過すると傷が落ち着き、半年から1年の間に柔らかく平坦になります。ただし、体質や部位によっては肥厚性瘢痕やケロイドとなり、傷の盛り上がりや硬さが続くことがあります。
手術後にその兆候が見られる場合やケロイド体質の方は、すぐにお知らせください。内服薬や外用テープを用いながら慎重に治療を行います。
これらの兆候が見られた場合や、ケロイド体質の方は早めにご相談ください。内服薬や外用テープなどを用いて、慎重に治療を進めます。
薬剤による副作用
麻酔や処方薬などで使用される薬剤により、アレルギー症状などの副作用が現れることがあります。
再発について
粉瘤が再発する可能性もあります。そのため、再発リスクを考慮し、慎重に手術を行います。