ほくろの特徴
ほくろとは、「母斑細胞(ぼはんさいぼう)」と呼ばれる細胞が増殖してできる良性の腫瘍です。医学的には「色素性母斑」と呼ばれます。ほくろには、平らなものや隆起したもの、褐色から黒色まで、さまざまな種類があります。
ほくろの多くは健康上の問題がないため、体にできても通常は心配する必要はありません。しかし、まれに「基底細胞がん」や「メラノーマ(悪性黒色腫)」などの悪性腫瘍が潜んでいる可能性もあります。そのため、新しくできたほくろや、既にあるほくろに変化が見られた場合は注意が必要です。
「ほくろが大きくなった」「色や形が変化した」などの変化に気づいた場合は、速やかにご相談ください。
悪性腫瘍(皮膚がん)の疑いがあるほくろの特徴
以下のような異変がみられた場合、皮膚がんの可能性があるので、気づき次第早めの受診をおすすめします。
- 急にほくろができた
- これまであったほくろが急に大きくなった(直径6ミリ以上)
- ほくろの色や形が変化している(色が濃くなった、複数の色が混じっている)
- 丸い形からいびつな形に変わっている
- ほくろと周囲の皮膚の境目が不明瞭になっている
良性のほくろの治療
顔にできたほくろは、良性であっても大きくなると周囲の注目を集めやすく、そのためコンプレックスを感じる方も少なくありません。
また、目の周りにあるほくろが視界を遮ったり、服やアクセサリーに引っかかることもあります。盛り上がったほくろが、髭剃りの際に邪魔になる事例もあります。
このように、ほくろが日常生活に影響を及ぼす場合には、保険適用の手術によって取り除くことが可能です。ただし、見た目を改善する目的のみで手術を行う場合は、全額自己負担となる点にご注意ください。
ほくろの診療
ほくろの診療において、患者様からお話しいただく症状や状況は、治療を進める上で非常に重要な情報です。当院では、治療計画を立てる際に、患者様の生活背景やご希望を詳しくお伺いしています。
治療方針を決める際は、以下の内容を総合的に考慮します。
- ほくろの特徴(サイズ、形状、位置)
- 患者様の肌質
- 職業
- 習慣
その後、ダーモスコピー(皮膚拡大鏡)を用いて、ほくろの詳細な状態を確認します。悪性の可能性が高いと判断された場合は、切除して病理検査を行い、正確な診断を実施します。
悪性腫瘍(皮膚がん)の診断
基底細胞がん
基底細胞がんは、皮膚がんの中で最も頻度が高く、特に顔面に発症しやすいのが特徴です。基底細胞がんは以下のような種類に分類されます。
- 結節潰瘍型
- 斑状強皮症型
- 表在型
特に、結節潰瘍型の初期段階はほくろと見分けがつきにくいため、正確な診断には皮膚生検などの慎重な検査が必要です。基底細胞がんは、後に解説するメラノーマより悪性度は低いものの、手術による完全な切除が必要です。
悪性黒色腫(メラノーマ)
悪性黒色腫(メラノーマ)は、がんの中でも悪性度が非常に高く、転移のスピードが速いのが特徴です。発見が遅れると命に関わる危険性があるため、早期発見と早期治療が極めて重要です。発生部位はさまざまですが、日本人の場合、特に足の裏に多く発生する傾向があります。
悪性黒色腫を疑う際には、以下のABCDE基準を参考に診断を行います。
ABCDE基準
A:Asymmetry(ほくろの形が左右非対称)
B:Border irregularity(皮膚との境界がはっきりせず輪郭が不明瞭)
C:color variegation(色がまだらで濃淡が不均一)
D:Diameter(6ミリ以上の大型の病変)
E:Evolution(急速な増大、形状・色調・表面の状態の変化)
この基準に加え、ダーモスコピーを使用して良性・悪性の判断を行います。検査の結果、悪性の可能性が低い場合は良性の色素性母斑(ほくろ)と診断されますが、悪性の可能性が高い場合はメラノーマと診断されます。確定診断のためには、悪性が疑われる腫瘍を切除し、病理検査を行います。
ほくろの治療
当院では、患者様のご要望を丁寧にお伺いし、それに基づいた治療を提供することを心がけています。患者様の皮膚状態やニーズに合わせた最適な治療法をご提案いたします。
ほくろの治療には、主にレーザー治療と切除手術の2種類があります。ほくろの位置や大きさを慎重に評価し、最も効果的な治療法をご提案いたします。
ご不安な点やご質問がございましたら、遠慮なくお申し付けください。
レーザー治療
ほくろはメラニン色素が主な構成要素で、多くの場合、レーザー治療で対応可能です。レーザー治療は、隆起したほくろにも効果が期待できます。
ただし、レーザー治療では一度の施術ですべてのほくろが完全に除去されるわけではなく、複数回の施術が必要となることがあります。治療が完了するまでには数カ月から長期間かかる場合もあります。
さらに、レーザー治療では母斑細胞が蒸発してしまうため、病理学的な検査を行うことができません。
切除手術
切除手術では、ほくろを丁寧に切除します。
皮膚の下では溶ける糸を使用して真皮縫合を行い、表皮では極細の糸で縫合します。精密に切除範囲を設定することで、綺麗な仕上がりを目指しています。