粉瘤の切開排膿手術とは?痛み・費用・袋ごと摘出との違いを形成外科医が解説

「粉瘤が腫れて痛い」「膿が出てきた」といった状態では、まず切開排膿(せっかいはいのう)手術で膿を出す必要があります。
これは応急処置であり、袋(嚢腫)自体を取り除かない限り再発してしまうため、最終的には袋ごとの摘出手術が必要です。
この記事では、
- 切開排膿が必要になるタイミング
- 手術の流れと痛みの程度
- 袋ごと摘出との違い
- 費用・受診科の選び方
を実際の臨床現場の視点から分かりやすく解説します。
「今は腫れていて取れないと言われた」
「痛みが怖い」
「どちらの手術を受ければいいの?」
という方も、この記事を読めば自分に合った治療の流れが分かります。
粉瘤治療で切開排膿手術はなぜ行うのか

切開排膿が必要になるのはどんな時?
粉瘤が炎症を起こすと、赤み・熱感・痛みを伴い、袋の中に膿がたまります。
このような化膿状態の粉瘤では、袋の摘出手術を行うことができません。なぜなら炎症下では周囲の組織が脆くなっており、袋が破れてぐずぐずになり境界が見えにくくなっているのです。この様な状況で無理に取り除くと皮膚や皮下組織の損傷に繋がり、結局取りきれなかった袋が周囲と癒着し悪化のリスクが高まります。
そのため、まずは「切開排膿手術」で膿を外に出して炎症を鎮めることが第一段階の治療になります。膿を取り除き、痛みを軽減してから、後日改めて袋ごと摘出するのが理想的な治療の流れです。
切開排膿と袋ごと摘出手術の違い
切開排膿と袋ごと摘出手術は、同じ「粉瘤の手術」でも目的と時期がまったく異なります。
切開排膿は、粉瘤の中で炎症が起き、膿が溜まっているときに行う応急処置です。腫れて熱を持ち、痛みを伴う状態では袋の輪郭が見えにくいため、まず皮膚を小さく切開して膿を外に出し、炎症を鎮めます。
この処置によって、
痛みが和らぎ、感染が広がるのを防ぐことができます。
一方、袋ごと摘出手術は、炎症が完全に治まった後に行う根治的な治療です。
袋(嚢腫)そのものを丁寧に取り除くため、再発のリスクがほとんどなくなります。
切開排膿が「今の痛みを取る処置」だとすれば、袋ごと摘出は「再発を防ぐ最終的な治療」です。
つまり、切開排膿で炎症を落ち着かせたうえで、後日袋を摘出する——この2段階治療が粉瘤を確実に治すための最も安全な方法です。
粉瘤の切開排膿の手術手順
局所麻酔と切開

局所麻酔を行い、皮膚に3〜5mmほどの小さな切開を加えます。麻酔注射の際にチクッとする痛みがありますが、数秒で感覚が鈍くなります。
排膿と洗浄

切開部から膿を押し出し、内部を生理食塩水で洗浄します。内容物には皮脂や角質が含まれており、独特の臭いを伴うことがありますが、感染を抑えるために必要な処置です。
ドレーン(排膿管)管理と再手術のタイミング

膿が再び溜まらないようにするため、一時的に「ドレーン」と呼ばれる小さな管を入れることがあります。数日で炎症が落ち着いたらドレーンを抜去します。
袋の摘出(根治手術)は、炎症が完全に治まった2〜6週間後に行うのが一般的です。
粉瘤の切開排膿手術は形成外科・皮膚科どちらで行うべきか

形成外科で受けるメリット
形成外科では、切開位置や縫合方法に美容的な配慮がされ、傷跡をできるだけ目立たせずに治療が可能です。また、再発を防ぐための袋の摘出まで一貫して対応できる点もメリットです。
皮膚科で対応できるケース
皮膚科でも小さい粉瘤や軽度の炎症であれば可能です。ただし、炎症が強い・深部にある・再発を繰り返している場合は形成外科へ紹介されることが多くなります。
粉瘤手術における切開排膿に関するQ&A

切開排膿した場合と袋ごと切除した場合とで料金は変わりませんか?
はい、異なります。切開排膿は保険適用で3割負担の場合5,000〜8,000円程度、袋ごとの切除は10,000〜20,000円程度が一般的です(部位・大きさにより変動)。
粉瘤治療で切開排膿後、切開した穴がなかなか小さくなりません。穴が塞がるまでどのくらいかかりますか?
通常は1〜2週間ほどで自然に縮小しますが、炎症が強かった場合や膿が深部に及んでいた場合は、3〜4週間かかることもあります。傷口を無理にいじらず、清潔を保つことが大切です。
他病院で粉瘤の切開排膿をした後、縫われていないようです。このままでいいのでしょうか?
切開排膿では、排膿を促すために縫合せず開放創で管理することが一般的です。膿を完全に出し切るための処置なので、異常ではありません。心配な場合は再診で確認しましょう。
切開排膿した後、穴が塞がるまで入浴してはいけませんか?シャワーだけにしたほうがいいですか?
基本的にはシャワーのみがおすすめです。湯船に浸かると細菌感染を起こす恐れがあるため、傷が塞がるまでは清潔な流水で優しく洗いましょう。
粉瘤ができたのですが、切った穴から内容物を絞り出す切開排膿は痛そうです。どのくらい痛いですか?
麻酔が効いている間はほとんど痛みを感じません。炎症が強いと麻酔が効きにくくなる場合がありますが、その際は冷却や追加麻酔で調整します。処置後はズキズキする程度の痛みが数日続くことがありますが、鎮痛剤でコントロール可能です。
まとめ
- 切開排膿は化膿した粉瘤に対する第一段階の治療(応急処置)
- 根治には炎症が治まった後の袋ごと摘出手術が必要
- 手術は保険適用で日帰り可能。費用は状態によって異なる
- 傷跡をきれいに治したい方は形成外科での治療がおすすめ
- 自己処置や放置は感染拡大・再発の原因になるため注意