古林形成外科-札幌院

医療コラム

背中にできる粉瘤(アテローム)の特徴と主な症状を解説

背中は皮脂腺が多く、衣類との摩擦や汗の影響も受けやすいため、粉瘤ができやすい代表的な部位といえます。

背中にできる粉瘤(アテローム)は、皮膚の下に袋状の嚢胞構造が形成され、そこに角質や皮脂などの老廃物が慢性的に蓄積することで発生する良性腫瘍です。

症状がないまま数ヶ月~数年経過することもありますが、放置すれば嚢胞が拡大し、炎症性粉瘤や感染性嚢胞に進行することもあり注意が必要です。

背中にできる粉瘤の主な症状と特徴

黒い点・皮下の塊

粉瘤の初期には、皮膚表面に小さな黒い点(開口部)が確認されることがあります。これは皮膚の表層とつながった嚢胞の出口であり、角質や皮脂が排出される唯一の通路です。この開口部から白い泥状の内容物が出てくることもありますが、臭いを伴うことが多く、不快感を覚える方も少なくありません。

また、皮膚の下には直径数ミリ~数センチ程度のコリコリとした塊(皮下腫瘤)が触れるようになります。特徴的なのは、境界が明瞭で可動性があること(皮膚の下で左右に動く感じ)です。柔らかさと弾力のあるしこりは、ニキビや脂肪腫とは異なる質感を持っており、経験のある医師であれば触診である程度鑑別が可能です。

このような「黒い点」と「皮下のしこり」の組み合わせは、粉瘤の代表的な臨床所見であり、炎症を起こす前の比較的軽度な状態です。この時点で受診すれば、くり抜き法など傷跡の小さな手術も選択できるため、気づいた段階で早めの対応が望まれます。

炎症による腫れ・発赤・痛み・かゆみ

粉瘤に細菌が侵入すると、局所に炎症が生じ、皮膚が赤く腫れ上がります。特に触れたり押したときに強く痛むようになると、炎症性粉瘤へと進行している可能性があります。この段階では、粉瘤内部に膿が溜まり、いわゆる膿瘍(のうよう)を形成することもあり、強い圧痛やズキズキとした自発痛を感じるようになります。

また、炎症の初期にはヒリヒリとしたかゆみが現れることもあり、無意識に掻いてしまうとさらに悪化しやすくなります。背中にできた粉瘤は、自分では見えにくく気づきにくい分、腫れや熱感に気づいた時点でかなり進行しているケースも少なくありません。

腫れ・発赤・痛み・かゆみのいずれかを感じた場合は、炎症が広がる前に早めに医療機関を受診し、必要に応じて抗生剤や外科的処置による対応を検討することが大切です。

触れると硬く弾力のあるしこり

炎症を起こしていない粉瘤は、見た目には目立たないこともありますが、皮膚の下にコリっとしたしこりとして存在しています。このしこりは、触れるとゴムボールのような弾力を感じることが多く、皮膚の下をわずかに動かせるのが特徴です。可動性があることから、皮膚と深層の間に袋状の構造(嚢胞)が形成されていることがわかります。

炎症がない状態では痛みも赤みもなく、数ヶ月~数年にわたってゆっくりとサイズを増していきます。放置を続けると、嚢胞壁が徐々に厚くなり、内部に古い角質や皮脂が層状に蓄積され、しこり自体がより硬く、輪郭のはっきりした塊へと変化していきます。

初期の柔らかい段階で摘出すれば、手術の傷も最小限に抑えられますが、嚢胞壁が肥厚し始めると、より大きな切開や縫合が必要になるケースもあるため、違和感を覚えた時点での早期受診が望まれます。

自壊・膿や血の排出・悪臭

粉瘤が一定以上の大きさに達すると、皮膚表面の圧力に耐えきれず自然に破裂することがあります。この「自壊」によって、皮膚に穴が開き、内部に蓄積されていた白く濁った泥状の内容物が排出されることがあります。排出された物質は、角質や皮脂、細菌の代謝産物などが混じり合ったもので、強い悪臭を放つのが特徴です。

また、炎症を伴っている場合には、排出物に膿や血液が混じり、創部は赤く腫れ、滲出液(しんしゅつえき)が止まらない状態になることもあります。見た目が改善されたように見えても、皮膚の下にある嚢胞(袋)はそのまま残っているため、自然に排出されたからといって治癒したとはいえません。

むしろ内容物を無理に押し出そうとすると、周囲の皮下組織に炎症を広げたり、細菌が逆流して新たな感染を引き起こす危険があります。自壊した粉瘤こそ早急な医師の処置が必要であり、再発や傷跡を最小限にとどめるためには、残った嚢胞を確実に摘出する手術が不可欠です。

背中にできる粉瘤と似た皮膚疾患との違い

ニキビ(尋常性ざ瘡)

ニキビは、皮脂腺が活発な部位の毛穴に角質や皮脂が詰まり、そこへアクネ菌(Cutibacterium acnes)が繁殖することで引き起こされる慢性炎症性疾患です。多くは皮膚の表層にとどまり、小さな赤みや膨らみとして現れ、数日から1週間程度で自然に治癒するケースが一般的です。

また、ニキビはホルモンバランスやストレス、食生活、スキンケアなどの影響を受けやすいのに対し、粉瘤は慢性的に存在する袋の中に老廃物が蓄積される構造的な病変であるため、時間の経過とともに確実に大きくなり、自然には消えません。ニキビと見た目が似ていても、症状の持続性と構造の違いから適切な診断が重要となります。

角栓(コメド)

角栓は、毛穴の出口に皮脂や角質が詰まってできる小さな栓状の構造物で、いわゆる「白ニキビ(閉鎖面皰)」や「黒ニキビ(開放面皰)」の原因となります。皮膚表面から見ると、白くプツっと盛り上がっていたり、黒ずんで見えることもありますが、これは酸化した皮脂やメラニンによるもので、皮膚病変としてはごく浅い層に限局した一過性のものです。

見た目が粉瘤と似ていることがありますが、角栓には皮膚内部に袋状の嚢胞構造が存在しないという決定的な違いがあります。角栓は正しいスキンケアや洗顔、角質ケアで改善可能なことが多く、数日~数週間で自然に解消するケースもあります。

脂肪腫(リポーマ)

脂肪腫は、皮下脂肪が増えてできる良性の腫瘍で、背中にできやすい代表的なできもののひとつです。触ると柔らかく、皮膚の下で少し動くような弾力のあるしこりとして感じられます。皮膚表面には黒い点や赤みがなく、見た目では気づきにくいため、他人に指摘されて初めて発見されることもあります。

痛みはほとんどなく、炎症や感染を起こすことはまれですが、大きくなると圧迫感や違和感が出る場合もあります。数年かけてゆっくりと成長するため、自然に小さくなることはなく、治療には手術による摘出が必要です。

脂肪腫の詳しい説明はこちら>>

おでき(せつ・よう)

おできは、毛包や皮脂腺に細菌が感染して起こる急性の化膿性炎症です。背中のように皮脂分泌が多く蒸れやすい部位では、特にできやすくなります。赤く腫れて強い痛みを伴い、数日以内に膿がたまり、中央が盛り上がって自然に破れることもあります。

粉瘤との違いは、急速に腫れること、袋状の構造を持たないこと、自然に治癒することがある点です。ただし、膿が残ると炎症が長引く場合もあり、必要に応じて切開や抗生剤による治療が行われます。

がん(皮膚がん・脂肪肉腫など)

皮膚がんや脂肪肉腫などの悪性腫瘍は、初期には粉瘤や脂肪腫と似たようなしこりとして現れることがありますが、短期間で急激に大きくなること、しこりの形がいびつで硬いこと、色調の変化や出血・潰瘍を伴うことが特徴です。

特に、触れて痛みがないのに急に大きくなってきた、表面がただれてきた、血がにじむなどの症状がある場合は注意が必要です。粉瘤との鑑別が難しいケースもあるため、数週間経っても治らない・変化が続くようなしこりがある場合には、早めに皮膚科または形成外科を受診し、必要に応じて画像検査や病理検査を受けることが重要です。

皮膚の悪性腫瘍(皮膚がん)の詳しい説明>>

背中の粉瘤に対する治療法|薬では完治しません

粉瘤の根治には、嚢胞ごと摘出する外科的治療が唯一の方法です。抗生剤や外用薬は炎症を抑える対症療法に過ぎず、袋が残っている限り再発のリスクが高いため、外科的除去が推奨されます。

くり抜き法(トレパン法)

直径5~7mm程度の小さな穴を開け、トレパンという器具で内容物と嚢胞壁を摘出します。傷跡が小さく、術後の回復が早いのが特徴で、炎症のない比較的小さな粉瘤に適しています。

当院の傷跡が小さく済む粉瘤の「くり抜き法」の詳しい説明>>

切開法(切除術)

皮膚を切開し、袋状の嚢胞を直接視認しながら確実に摘出する方法。再発リスクが最も低く、大きな粉瘤や炎症・再発を繰り返すケースに適用されます。術後は縫合が必要になることもあります。

当院の粉瘤「切開法」の詳しい説明>>

背中にできた粉瘤に寄せられるQ&A

Q. 背中の粉瘤ができやすい人の特徴はありますか?

A. 背中は皮脂腺が多く、汗や皮脂の分泌が活発な部位のため、皮脂の分泌が過剰な体質の方や、運動習慣がある人、仕事で長時間座ることが多い人は粉瘤ができやすい傾向があります。また、遺伝的な体質や、肌の摩擦・圧迫が日常的にかかる生活習慣も関係するといわれています。

意外と知らない!粉瘤ができやすい人の体質・生活習慣・共通点>>

Q. 背中の粉瘤は皮膚科?形成外科?何科に行くべき?

A. 粉瘤は皮膚の腫瘍なので、皮膚科でも診断と初期対応が可能ですが、摘出手術まで希望する場合は形成外科や外科の受診がおすすめです。特に粉瘤が大きい、再発している、傷跡をなるべく目立たせたくないという場合には、形成外科専門医による外科的治療が適しています。

粉瘤は形成外科と皮膚科どっちで受けるべき?後悔しないための選び方>>

Q. 背中の粉瘤を手術したら椅子にもたれたり、普通に寝たりできますか?

A. 手術直後は、患部を強く圧迫しないように注意が必要ですが、1~2日程度で日常生活に支障は出にくくなります。ただし、創部に直接圧がかからないよう、背もたれの硬い椅子は避ける、枕やクッションで調整するなどの工夫がおすすめです。

Q. 背中の真ん中より少し上の粉瘤を治療するとき、どんな服装が良いですか?

A. 前開きのシャツやゆったりしたTシャツなど、背中をすぐに出せる服装が望ましいです。術後はガーゼや保護テープを貼ることもあるため、通気性が良く、圧迫しにくい素材やサイズ感の服を選ぶと快適です。ワンピースやボディラインにぴったりした服は避けましょう。

Q. 数ヶ月前にあった粉瘤が小さくなりました。自然に治ったのでは?

A. 一時的に目立たなくなったとしても、皮下にある嚢胞(袋)が残っていれば自然治癒ではありません。炎症が落ち着いても、数ヶ月~数年後に再び腫れる、化膿するといったことが多く見られます。完治させるには、袋ごと取り除く外科的摘出が必要です。

まとめ|背中の粉瘤は放置せず、早めの判断と治療を

背中にできる粉瘤は、見えにくく気づかれにくい反面、気づいたときには炎症が進んでいることも多い部位です。

初期にはニキビや脂肪のかたまりと見間違えることもありますが、粉瘤は皮膚の下に袋が残る限り自然に治ることはありません。

くり抜き法・切開法といった手術による治療が必要であり、再発を防ぎつつ、傷跡にも配慮した処置ができるクリニックの選択が重要です。

当院では、形成外科専門医が診察から日帰り手術・術後のケアまで一貫して対応しております。

「背中のしこりが気になる」「治療するか迷っている」という方も、お気軽にご相談ください。

早めの受診が、痛みや再発リスクを減らし、日常生活への影響も最小限に抑える第一歩です。

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北海道皮膚のできものと粉瘤クリニック古林形成外科 札幌院

北海道皮膚のできものと粉瘤クリニック古林形成外科 札幌院では、皮膚疾患を専門とする日本形成外科学会認定の形成外科専門医が診療を担当しています。当院では、粉瘤、脂肪腫、眼瞼下垂、耳垂裂などの疾患に対応した日帰り手術をはじめ、形成外科全般の診療を行っています。

北海道皮膚のできものと粉瘤クリニック古林形成外科 札幌院では、皮膚疾患を専門とする日本形成外科学会認定の形成外科専門医が診療を担当しています。当院では、粉瘤、脂肪腫、眼瞼下垂、耳垂裂などの疾患に対応した日帰り手術をはじめ、形成外科全般の診療を行っています。

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