「ワキにしこりがある」「脇汗をかくと痛む」それ、粉瘤かもしれません。

脇の下は、汗腺が密集し皮脂の分泌も多いことから、毛穴のつまりや摩擦によって粉瘤ができやすい部位です。さらに、蒸れやすく刺激が加わりやすい環境のため、一度できると炎症や再発を繰り返しやすいのも特徴です。
本記事では、ワキにできる粉瘤の見分け方や他のできものとの違い、治療法、放置した際のリスク、手術費用まで詳しく解説します。「なんとなく気になる」「放っておいていいのか分からない」と感じている方は、参考にしてください。
- ワキにできる粉瘤の特徴と注意すべきポイント|医学的な視点から解説
- ワキにできる粉瘤に似たできものとの違い
- ワキの粉瘤の手術費用はいくらかかるのか徹底解説
- ワキの粉瘤の治し方、薬では根治しません
- ワキにできた粉瘤に寄せられるQ&A
- Q. 脇に粉瘤みたいなものが出来てしまいました。ワキガと色素沈着もあり恥ずかしいのですが、自分と同じような方はいますか?また、押したら膿が出てきてしまったのですが、これは悪化したのでしょうか?
- Q. 粉瘤の手術後、脇のレーザー脱毛はどのくらい期間を空ければ再開できますか?
- Q. 粉瘤らしきものがある状態で、脇毛は剃らない方がいいですか?制汗剤は使っても大丈夫でしょうか?
- Q. 脇の下に1.5mm程度の小さな粉瘤のようなものがあります。下着と擦れて痛いです。皮膚科での治療は一回で終わりますか?
- Q. 粉瘤の手術について、皮膚科で「脇はリンパや血管があるから手術はおすすめしない」と言われました。本当でしょうか?
- Q. 脱毛を始めたころから脇にコリコリしたものがあります。粉瘤か、乳がんや悪性リンパ腫の可能性も気になります。何科に行くべきですか?
- Q. くり抜き法で脇の粉瘤を手術した後、汗が傷にしみたりしませんか?
- Q. ワキガ手術で切開した部分と同じ場所に粉瘤ができてしまいました。また同じ場所を切っても大丈夫でしょうか?
- Q. 粉瘤がある状態で乳がん検診のマンモグラフィーは受けても大丈夫ですか?
- まとめ
ワキにできる粉瘤の特徴と注意すべきポイント|医学的な視点から解説
腋窩(ワキ)は、粉瘤(表皮嚢腫)ができやすい部位のひとつです。その理由には、アポクリン腺・エクリン腺の密集による湿潤環境、皮膚の重なりによる通気性の悪さ、そして日常的な摩擦や汗、制汗剤の使用による刺激など、いくつもの要因が関係しています。
また、ワキは腕の可動により常に動きがある部位であり、粉瘤ができた際には圧迫や擦れによって炎症が悪化しやすいのも大きな特徴です。さらに、ワキ毛の自己処理(剃毛・脱毛)やデオドラント剤の影響で毛穴や皮膚に微細な損傷が生じることも、粉瘤発生の一因とされています。
ここでは、そんな「ワキの粉瘤」について、医学的に見た特徴や症状、他の疾患との違い、根治治療法、費用、よくある質問まで詳しく解説していきます。
黒い点・塊ができる
ワキにできる粉瘤では、皮膚の表面に小さな黒い点(開口部)が見えることがあります。これは毛穴が閉塞し、内部にたまった角質や皮脂が皮膚とつながっている状態を示すもので、粉瘤を見分ける重要な手がかりとなります。
開口部は目立たないこともありますが、よく見ると中心にポツンと黒い点があり、そこから内容物が排出されることもあります。皮下にはコリコリとしたしこりが触れ、初期段階では可動性があり、皮膚の下で軽く動くように感じるのが特徴です。
この黒い点と弾力のある塊がセットで確認される場合、粉瘤の可能性は高く、炎症を起こす前の早期発見・早期治療が望まれます。特にワキは汗や摩擦が多い部位のため、症状の進行が早くなる傾向があります。
腫れ(炎症)・化膿・押すと痛い・かゆみ
脇の下は体温がこもりやすく、汗や皮脂が溜まりやすいため、細菌が繁殖しやすい部位です。こうした環境下で粉瘤が炎症を起こすと、赤く腫れ上がり、押すと痛みが強く出るようになります。腋窩リンパ節の腫れや圧痛を伴うこともあり、触るだけで不快感を覚えるケースもあります。
さらに進行して炎症性粉瘤になると、皮膚の色が紫赤色に変化したり、膿がたまって膿瘍(のうよう)を形成することもあります。腫れによって腕の動きが制限される場合もあり、日常生活への影響が出る前に早めの処置が望まれます。悪化すると切開排膿が必要になるため、自己判断で放置しないことが大切です。
しこり・触ると硬い
ワキにできる粉瘤は、初期には自覚症状がほとんどなく、指で触ると皮膚の下にコリッとした弾力のあるしこりとして気づかれることが多いです。これは、角質や皮脂が袋状の構造(嚢胞)にたまってできたものです。
大きさは数ミリから数センチまでさまざまで、炎症がなければ痛みはありません。ただし、癒着や深部まで嚢胞が広がっている場合は、硬く動かないしこりとして感じられることもあります。
ワキは摩擦や圧迫が多い場所のため、粉瘤が目立たないまま進行するケースも多く、「違和感が続く」「しこりが大きくなってきた」と感じたら、早めに受診することで小さな傷で治療できる可能性があります。
中身が破裂・膿、血が出る
進行すると皮膚が破れ、嚢胞内の角質や皮脂がどろりとした白色物質として流れ出ます。これにはケラチン様物質や細菌代謝物が含まれているため、独特の悪臭を伴うことが多く、衣服に染みて初めて気づくこともあります。ただし、内容物が出ても嚢胞が残れば再発は避けられません。
破裂後は二次感染のリスクが高まり、炎症が拡大する可能性もあります。放置せず、早めに適切な処置を受けることが重要です。再発を防ぐためには、嚢胞ごと完全に取り除く手術が必要になります。
ワキにできる粉瘤に似たできものとの違い
ニキビ・角栓
ワキは皮脂腺や汗腺が密集しており、ニキビや角栓ができやすい部位でもあります。これらは毛穴が一時的に詰まり、軽度の炎症を起こす皮膚トラブルで、通常は数日~1週間ほどで自然に治癒します。
一方、粉瘤は皮膚の下に袋状の構造(嚢胞)ができ、その中に老廃物が溜まり続けるため、自然には治らず徐々に大きくなるのが特徴です。見分けのポイントは、中心に開口部(黒い点)があるか、しこりが皮膚の奥で動くかどうかです。
脂肪腫
脂肪腫は皮下脂肪の塊で、柔らかく痛みがないのが特徴です。粉瘤のように開口部がなく、内容物が出ることもありません。ワキのような可動性の高い部位では粉瘤と間違えられることがありますが、脂肪腫はより深層にできる傾向があり、押しても痛みを伴わない点で異なります。
おでき(せつ)
細菌感染によって毛包や皮脂腺が急性炎症を起こしたものが「おでき(せつ)」です。粉瘤と違い、短期間で赤く腫れ、強い痛みと膿を伴います。発熱や倦怠感など全身症状を伴う場合もあり、粉瘤よりも急速に悪化するのが特徴です。
がん(皮膚がん・軟部腫瘍など)
ワキのしこりが急激に大きくなったり、色の変化・出血・潰瘍を伴う場合、皮膚がんやリンパ節の腫瘍など悪性疾患の可能性もあります。粉瘤は基本的に良性ですが、見た目や触感だけでは判断が難しいため、しこりが長期間変化しない、あるいは短期間で急成長する場合には早めの精密検査をおすすめします。
ワキの粉瘤の手術費用はいくらかかるのか徹底解説
粉瘤の手術費用は、大きさ・部位・処置内容によって異なりますが、健康保険が適用されるため、自己負担は3割の方で数千円~1万円台前半程度が目安です。
たとえば、くり抜き法での小さな粉瘤なら4,000円~6,000円程度、切開・縫合を伴う中等度の手術では7,000円~1万5,000円程度になることもあります。
別途、診察料や検査料(病理検査を含む)が加算されるため、実際の費用については診察時に医師に確認するのが確実です。
ワキの粉瘤の治し方、薬では根治しません
粉瘤は、内部に袋状の嚢胞がある限り、外用薬や抗生剤では完全には治りません。炎症がある場合に一時的に腫れが引くことはありますが、袋を残したままでは再発を繰り返してしまいます。根本的に治すには、嚢胞を取り除く外科的手術が必要です。
くり抜き法(トレパン法)

中心に5~7mmほどの小さな穴を開け、専用の器具を使って内容物と袋を引き抜く方法です。傷跡が小さく、術後のダウンタイムも比較的短いため、目立ちやすいワキのような部位ではこの方法を選ぶことも多くあります。炎症がない小さめの粉瘤に適しています。
切開法(通常の摘出術)

皮膚を切開し、粉瘤を袋ごと視認しながら確実に摘出する方法です。炎症性粉瘤や再発を繰り返しているもの、大きめの粉瘤にはこちらが適しています。縫合を行うこともありますが、形成外科ではできるだけ目立たない位置・方法で処置が行われます。
ワキにできた粉瘤に寄せられるQ&A
Q. 脇に粉瘤みたいなものが出来てしまいました。ワキガと色素沈着もあり恥ずかしいのですが、自分と同じような方はいますか?また、押したら膿が出てきてしまったのですが、これは悪化したのでしょうか?
A.ワキガや色素沈着がある方に粉瘤ができるのは珍しくありません。摩擦や汗による刺激、制汗剤の使用、毛穴の詰まりなどが重なりやすいため、複合的な悩みを抱えて来院される方は多いです。
膿が出たということは、粉瘤が炎症を起こし「炎症性粉瘤」に進行した状態です。見た目以上に内部で感染が進んでいることもあるため、早めの診察をおすすめします。
Q. 粉瘤の手術後、脇のレーザー脱毛はどのくらい期間を空ければ再開できますか?
A. 通常は術後の傷が完全に治癒してから傷が落ち着くまでの目安として約3ヶ月を推奨しています。
術後の赤みや皮膚の薄い状態で脱毛を行うと、色素沈着や炎症のリスクが高まるため、医師の診察で回復状況を確認してから再開すると安心です。
Q. 粉瘤らしきものがある状態で、脇毛は剃らない方がいいですか?制汗剤は使っても大丈夫でしょうか?
A. できるだけ手術・診察前は剃毛を控えた方が安全です。カミソリによる小さな傷があると、処置時に感染のリスクが上がるためです。また、制汗剤は成分によっては刺激になるため、診察当日は使用せず、清潔な状態でお越しください。
Q. 脇の下に1.5mm程度の小さな粉瘤のようなものがあります。下着と擦れて痛いです。皮膚科での治療は一回で終わりますか?
A. 状態にもよりますが、小さな粉瘤で炎症がなく、くり抜き法などで袋まで除去できる場合は1回の処置で完了することもあります。
ただし、術後の経過確認やガーゼ処置で1~2回の通院が必要な場合もあります。
Q. 粉瘤の手術について、皮膚科で「脇はリンパや血管があるから手術はおすすめしない」と言われました。本当でしょうか?
A. 確かに脇はリンパ節や神経・血管が密集する部位ですが、形成外科ではそういった解剖構造を熟知した医師が安全に摘出を行っています。
脇は色素沈着が起こりやすく、再発も多い部位なので丁寧な摘出と傷跡の配慮が重要視されており、形成外科が専門的に行っていると言っても過言ではありません。
Q. 脱毛を始めたころから脇にコリコリしたものがあります。粉瘤か、乳がんや悪性リンパ腫の可能性も気になります。何科に行くべきですか?
A. 脱毛後に現れるしこりは毛穴の炎症や粉瘤の可能性が高いですが、乳がんやリンパ腫なども部位によっては疑う必要があります。
皮膚表面に近く、動かせるようなしこりであれば形成外科・皮膚科、深部にあって動きが悪い・硬い・短期間で大きくなるなどの特徴がある場合は、乳腺外科などでの精密検査も視野に入れましょう。
Q. くり抜き法で脇の粉瘤を手術した後、汗が傷にしみたりしませんか?
A. 手術直後は汗がしみる感覚や、刺激になることがありますが、2~3日で治まる方が多いです。
ガーゼで保護し、清潔を保ちながら数日間は無理な動きを避けて過ごすことで、しみる感覚も最小限になります。
Q. ワキガ手術で切開した部分と同じ場所に粉瘤ができてしまいました。また同じ場所を切っても大丈夫でしょうか?
A. 以前の手術部位にできた粉瘤でも、瘢痕(はんこん)状態や皮膚の厚みを考慮しながら安全に手術を行うことは可能です。
ワキガ手術後の皮膚は硬くなっていることが多いため、経験のある形成外科医による丁寧な剥離と縫合が重要になります。
Q. 粉瘤がある状態で乳がん検診のマンモグラフィーは受けても大丈夫ですか?
A. 炎症がなく、皮膚表面のしこりであれば基本的にはマンモグラフィー検査に支障はありません。
ただし、粉瘤が炎症性で強く腫れている、痛みがある、あるいは乳腺や脇のしこりの鑑別がついていない場合は、事前に医師へ申告しておくと安心です。
まとめ
ワキにできる粉瘤は、見た目や初期の感触だけではニキビや脂肪のかたまりと見分けがつきにくく、「放っておけば治るだろう」と見過ごされがちです。しかし、ワキという部位は汗や皮脂の分泌が活発で、摩擦・蒸れ・圧迫といった炎症リスクが常に伴う場所です。そのため、他の部位に比べて粉瘤が急速に悪化したり、再発しやすい傾向があります。
粉瘤は、症状が軽いうちに適切な治療を受ければ、傷跡も小さく、短期間での日常復帰が可能です。逆に放置すればするほど、炎症による痛みや膿瘍化、切開範囲の拡大といった負担が大きくなります。美容面や生活の快適さを考えても、早期の診断と治療が重要です。
当院では、ワキを含めた体のさまざまな部位の粉瘤に対応しており、くり抜き法・切開法のいずれにも対応可能です。形成外科専門医による診察・日帰り手術体制を整え、再発防止や傷跡の目立たなさにも配慮しています。
「これって粉瘤かも?」「昔からワキにしこりがあるけど放置している」――そんなお悩みがあれば、一度専門医にご相談ください。早めの一歩が、トラブルを最小限に抑える最善の選択です。