耳の粉瘤の治療・手術方法を形成外科専門医が解説

耳の粉瘤は手術で取り除く方法でしか完治しません。
この記事では、形成外科専門医が、耳の粉瘤に対する正しい手術方法について、わかりやすく解説します。
粉瘤の基本から手術の流れ、術後の注意点まで、専門的な視点で詳しくご紹介しますので、治療を検討されている方はぜひ参考にしてください。
耳の粉瘤の手術・治療方法|手術が唯一の根本治療

耳にできた粉瘤を根本的に治すためには、袋を皮膚の下から完全に摘出する外科的手術が唯一の方法です。

見た目は小さくても、皮膚の奥深くまで袋が広がっていることがあり、内容物だけを取り除いても再発を繰り返す原因になります。
当院では、耳という目立ちやすく繊細な部位に配慮しながら、次の2つの方法から状態に応じた最適な術式を選択しています。いずれも局所麻酔での日帰り手術に対応可能です。
- くり抜き法(トレパン法)
- 切開法
くり抜き法(トレパン法)

くり抜き法は、粉瘤の中心に直径5mmほどの小さな穴を開け、トレパンという専用器具を使って嚢胞の内容物と袋そのものを取り出す手術法です。
この方法は、皮膚の切開が最小限で済むため、術後の傷跡をできるだけ目立たせたくない方や、耳のように形状が重要な部位に非常に適しています。
術後は縫合を必要としないことも多く、ダウンタイムも比較的短く済むのが特徴です。
ただし、耳は皮膚が伸びやすく粉瘤の大きさによっては皮膚の余りが強く出るため、切開法で皮膚を切除しながら形を整える必要がある場合もすくなくありません。
手術の流れ

STEP1
切開箇所にペンでマーキングを行い、腫瘍まわりに局所麻酔を施します。

STEP2
メスで皮膚を慎重に切開します。

STEP3
粉瘤にたまっている老廃物をきれいに取り除きます。

STEP4
被膜を剥がし、そのまま粉瘤を摘出します。

STEP5
皮膚に余計なシワが生まれないように、切開部位を調整します。

STEP6
十分に止血した後、切開した部位を縫合します。
※傷あとをきれいにするため、形成外科的縫合が行われます。
切開法

切開法は、皮膚を適切な長さで切開し、視認下で粉瘤の袋をしっかりと確認しながら摘出する方法です。
炎症性粉瘤や、繰り返し再発を起こしているケース、嚢胞が深部に広がっている症例に適しています。
術後は皮膚を縫合する必要がある場合もありますが、当院では耳の自然なラインやシワに沿ったデザインで縫合し、術後の見た目にも最大限配慮しています。
また、炎症が強い場合には、切開排膿のみを先行し、後日改めて摘出術を行う「二期的手術」を選択することもあります。
耳は形状や見た目がとても重要な部位であるため、単に取り除くだけでなく、術後の仕上がり・再発リスク・生活への影響まで考慮した手術選択が重要です。特に大きくなると皮膚余剰により綺麗に治せない場合も多くあります。
当院では、耳の粉瘤にも豊富な臨床経験を持つ形成外科医が、機能と整容性の両面に配慮した治療をご提供しています。
手術の流れ

STEP1
アプローチ部位にペンでマーキングを行い、腫瘍まわりに局所麻酔を施します。

STEP2
トレパンやメスを使用し、粉瘤がある皮膚に小さな穴を開けます。

STEP3
被膜にたまっている老廃物を絞り出します。

STEP4
被膜を摘出します。

STEP5
止血後、切開した傷口を縫合します。
※傷あとをきれいにするため、形成外科的縫合が行われます。
耳にできる粉瘤の手術費用|保険適用で安心

耳にできた粉瘤の手術費用は、保険診療の対象です。
自己負担3割の方であれば、おおよそ5,000~18,000円程度(粉瘤の大きさや処置内容により変動)となります。
術前診察の際に、費用や術式、注意点についてしっかりご説明しますのでご安心ください。
耳の粉瘤の治療後の注意点

創部のケア
手術直後は、傷口にガーゼを当てた状態でお帰りいただきます。
手術後1〜3日ほどは、血液や体液でガーゼが滲みやすくなるため、毎日新しいものに取り替えてください。その際、シャワーで創部を洗い流しても問題ありません。血液や分泌物が止まったら、ガーゼからテープに変更してください。
入浴
手術翌日からシャワーでの入浴が可能です。ただし、浴槽での入浴は感染リスクがあるため、抜糸するまでは控えてください。
運動
手術当日・翌日、場合によては抜糸するまで控えて頂いた方が安心です。詳細については手術後にご説明いたします。
飲酒
アルコールを摂取すると血行が良くなり、血腫(血のたまり)ができやすくなる恐れがあります。手術当日と翌日のアルコール摂取は控えてください。
まとめ
今回は耳の粉瘤の手術方法について解説してきました。
当院では、「くり抜き法」「切開法」により粉瘤を根治いたします。
耳は外的刺激の受けやすい部位ですので、粉瘤やできものが発生しやすい箇所です。
「粉瘤かも」と思ったら放置せずになるべく早く医療機関にて相談するようにしましょう。