顔にできた「ニキビのようなできもの」自然に治らないなら粉瘤の可能性が高いです

顔に現れるしこりや膨らみは、見た目がニキビと似ていることも多いため、軽く考えて放置されがちです。しかし、数週間~数ヶ月たっても大きさが変わらない、あるいはゆっくりと成長している場合、それは粉瘤(アテローム)かもしれません。
粉瘤とは「皮膚の下にできた袋状の構造物に老廃物がたまり続ける良性腫瘍」です。顔は皮膚が薄く皮脂腺が密集しているため、ひとたび粉瘤ができると炎症や腫れを起こしやすい傾向があります。そのため「顔だから見た目が気になる」「目立つ場所なので傷跡を残したくない」というご相談も少なくありません。
本記事では、顔にできる粉瘤の見分け方・できやすい部位の特徴・治療法・術後の注意点・Q&Aまで、医療的な視点と患者さまの視点の両方からわかりやすく解説していきます。
顔にできる粉瘤の特徴と、他の皮膚疾患との違い
一見すると「ニキビかな?」「脂肪の塊(稗粒腫)かも」と思われやすい粉瘤ですが、実際にはニキビや稗粒腫とは性質や経過、治療法がまったく異なります。誤認したまま市販薬を塗ったり、無理に潰してしまうと炎症を起こし、膿瘍形成(うみがたまり皮膚が破れる状態)に進行することもあるため注意が必要です。
ニキビとの違い(尋常性ざ瘡との鑑別)

ニキビは、皮脂の分泌過多や毛穴の閉塞、アクネ菌の増殖などによって発生する炎症性疾患です。多くの場合、数日~2週間程度で自然軽快する傾向があります。
一方で粉瘤は、皮膚の深い層に袋状の構造(嚢胞)を持っていて、自然軽快しない点が大きな違いです。
ニキビと異なり、内部構造があるため放置しても自然には消失せず、徐々に大きくなっていきます。中央に黒い点(開口部)を伴うことも多く、圧迫時には悪臭を伴う粥状物質が排出されることも粉瘤特有の特徴です。
脂肪腫(リポーマ)との違い(軟部腫瘍との鑑別)

脂肪腫は、皮下脂肪細胞が増殖してできる良性の腫瘍で、柔らかく、皮膚のすぐ下で滑らかに動くのが特徴です。
基本的に開口部や内容排出がないため、黒点がある・圧迫すると中身が出るという症状がなければ脂肪腫(リポーマ)の可能性が高いと考えられます。
顔にできやすい粉瘤の部位と原因
顔に粉瘤ができやすいのは、皮脂腺が多く、摩擦や刺激、毛穴詰まりが起こりやすい部位が揃っているからです。
- おでこ
- 鼻
- 頬
- 耳
部位ごとに特徴があるため、それぞれ解説していきます。
おでこ

皮脂の分泌が多く、前髪が触れることで蒸れや刺激が生じやすい部位です。
粉瘤ができても、初期は「ニキビかな」と様子を見る方が多く、気づいたときには数cmになっているケースも少なくありません。
額は皮膚が薄く、すぐ下に固い骨があるためふくらみとして認識しやすく「こぶができてきた」と表現される事も少なくありません。粉瘤も直下の前頭筋筋膜との境界が明瞭で比較的腫瘍が取りやすい部位です。
額は前頭筋の収縮で横方向の皺が多いため、傷もしわに沿って切ることでほぼ目立たない結果になる事が多いです。
鼻

小鼻や鼻筋にかけては皮脂腺が密集しており、毛穴が目立ちやすく、角栓が詰まりやすいエリアでもあります。
鼻の皮膚は硬く伸展しにくいためそこまで大きな粉瘤にはなりにくい部位ですが、小さくても皮膚の膨らみが目立つため、見た目のストレスから早期受診につながることが多いのが鼻の特徴です。
鼻の様に皮脂腺の多い部位は比較的傷が目立たず治る事が多いです。
頬

マスクとの接触、スキンケア用品の刺激、メイクの洗い残しなど、外的刺激の多い部位です。
頬もTゾーンに続いて毛穴が多い部位で、皮膚が比較的薄く伸展しやすいため、深部にあると無症候性粉瘤の場合気付かない事もあります。時間と共に大きな粉瘤になる事があり、炎症を起こすと急激に赤く腫れて痛みが強くなる傾向もあります。
耳

耳周囲は脂腺が多く、立体的な構造から老廃物が溜まりやすい部位でもあります。
そのため耳前部や耳裏から首にかけての範囲は粉瘤ができやすい傾向があります。
耳周囲は皮膚が薄く、大きくなると皮膚が伸展されてしまうため、余った皮膚を切除できる切開法が適しています。
顔にできる粉瘤の治療方法|放置せず、根本からの治療を
顔にできた粉瘤は、自然に消えることはありません。
一時的に小さくなったように見えても、嚢胞(袋)が皮膚の下に残っている限り、再発・炎症のリスクは続きます。
根本的に治すには、袋ごと外科的に摘出することが唯一の方法です。
当院では、症状や粉瘤の位置・大きさ・患者さまのご希望に応じて、以下2つの手術法から最適なものをご提案しています。
くり抜き法(くりぬき法)

専用の器具(トレパン)で、粉瘤の開口部を小さく丸く切開し、そこから内容物と嚢胞を摘出する方法です。
特徴は「傷が小さく、術後の違和感が少ない」こと。特に顔など傷跡が気になる部位では、見た目に配慮しつつ粉瘤を除去できるため好まれる傾向にあります。
ただし、炎症が強い場合や粉瘤が大きい場合は、視野が確保できる切開法のほうが適していると判断されることもあります。
切開法

粉瘤の上の皮膚を適切な長さで切開し、中の膿・角質とともに袋を確実に取り除く治療法です。
再発防止においては最も確実性が高く、特に炎症性粉瘤(感染や発赤を伴う状態)には第一選択となります。
手術後は縫合が必要になることもありますが、縫い方・傷の方向・テープ固定などで術後の見た目にも最大限配慮しています。
術後のテープケアやUVカット指導なども含め、「顔だからこそ安心して受けられる治療」をご提供しています。
顔にできる粉瘤の手術費用|保険適用で安心です
粉瘤の手術は、健康保険が適用される外科的治療です。
顔にできた場合でも、形成外科の専門医が処置を行えば保険内で対応可能です。
3割負担の方であれば、粉瘤の大きさや処置内容によりおおよそ5,000円~18,000円程度が目安になります(※別途、初診料や薬代がかかる場合あり)。
くり抜き法と切開法で大きな金額差はありませんが、術式や再診回数などによって多少前後することがあります。
診察時に状態を確認し、術式・費用・ダウンタイムについてしっかり説明してから手術を行うのでご安心ください。
顔にできた粉瘤に関するよくあるご質問(Q&A)
Q. 小さくて痛くない粉瘤、取らなくても大丈夫ですか?
→ 初期段階では痛みもなく目立たないことが多いため、放置されがちですが、袋が残っている限り成長・炎症・再発の可能性は消えません。
顔は炎症による腫れや破裂のリスクが高いため、小さいうちにの処置をおすすめします。
Q. 顔に複数できています。珍しいことですか?
→ 粉瘤は体質的にできやすい方もおり、顔や背中に複数見られるケースも珍しくありません。
必要に応じて段階的に手術することも可能ですので、まずは一度ご相談ください。
Q. 顔の粉瘤はどれくらい大きくなりますか?
→ 自覚がないまま進行し、1~2cmを超えてから気づかれる方もいます。
大きくなるほど手術時の切開も大きくなり、ダウンタイムが延びる可能性があるため、早期の対応がベストです。
Q. 抗生剤で小さくなったことがあるけど、それで治ったのでしょうか?
→ 抗生物質は炎症や腫れを一時的に抑えるだけで、袋(嚢腫)は残っています。
根治には袋ごと取り除く手術が必要です。
Q. 顔の粉瘤はどうすれば予防できますか?
→ 完全な予防は難しいですが、皮脂詰まりを防ぐスキンケアや摩擦の少ない生活習慣、紫外線対策などが役立ちます。
また、前髪の蒸れやマスクの刺激も誘因になり得ます。
Q. 手術後の化粧はいつからできますか?
→ 術後の状態によりますが、通常は抜糸後(約5~7日後)から可能です。
当院では術後のメイク再開時期やUVケアについても丁寧にお伝えしています。
Q. 手術の傷を隠したいのですが、テープでカバーしても大丈夫?
→ はい、むしろ医療用テープを数週間貼っておくことで、傷跡がよりきれいに治りやすくなります。
メイク用のカバーテープや市販の肌色保護シールなどもご案内しています。
Q. 顔の粉瘤はがんになることはありますか?
→ 基本的に良性腫瘍なので、悪性化することは極めてまれです。
ただし、炎症を繰り返したり破裂を放置していると、組織が硬くなったり傷跡が残る可能性はあります。
Q. 子どもにも粉瘤ができますか?小児皮膚科に行くべき?
→ はい、小児にも粉瘤はできます。顔にできることもありますが、基本的には形成外科または皮膚科で対応可能です。
当院では、小学生以上であれば日帰り手術にも対応しています。
まとめ|顔の粉瘤は、早めの診断と専門的な対応が大切です
顔にできた粉瘤は、目立つだけでなく、炎症によって痛みや赤みが強くなることもあり、見た目・生活の質の両面に影響を及ぼします。
「ニキビかと思っていたら治らない」「また同じ場所にできた」そんなときは、自己判断せず、形成外科などの専門医に相談することが重要です。
当院では、顔の粉瘤に特化したくり抜き法・切開法の両方に対応し、術後の見た目にも配慮した丁寧な処置とケアを行っています。
診察から手術、術後フォローまで一貫して行っておりますので、不安がある方も安心してご相談ください。