できものとは
できものは、皮膚に現れる腫れやしこりのことを指し、その種類は多岐にわたります。イボやニキビ、ほくろなども広義の「できもの」に含まれ、これらは痛みなどの症状を伴わないことが多いのが特徴です。
しかし、病変の進行に伴って痛みや出血、悪臭などの症状が現れたり、外見が変化することがあります。できものは体のあらゆる部位に生じる可能性があり、皮膚表面に現れるものもあれば、内側にできるものもあります。色合いや硬さ、大きさもさまざまです。
中には皮膚がんなどの悪性腫瘍の可能性もあるため、異変を感じたら早急に医療機関を受診し、適切な検査や治療を受けることが重要です。良性の場合でも、イボや粉瘤などは早期に手術を受けることで、患者様の負担軽減が期待できます。
このようなお悩みがある方はご相談ください
- できものが悪性ではないか不安
- ほくろやイボが徐々に大きくなってきた
- できものから出血する
- できものが化膿する
できものの種類
粉瘤(アテローム)
粉瘤(アテローム)は、表皮嚢腫(ひょうひのうしゅ)とも呼ばれる良性の皮下腫瘍の一種です。顔や首、背中、耳の後ろなどに発症しやすく、皮膚の上皮成分が皮下に落ち込み、袋状の組織を形成することで生じます。
この袋状の組織の中には、垢や皮脂といった老廃物が蓄積されていきます。ウイルス感染や外傷、体質などが発症の要因として考えられていますが、詳細な原因は不明です。
初期段階では数ミリ程度の小さな盛り上がりで、ニキビやしこりと間違えやすいことがあります。粉瘤を放置すると大きくなり目立つようになり、悪臭や炎症を引き起こす可能性があります。内容物を無理に押し出すと、袋が破れて炎症を起こすだけでなく、脂肪組織内に老廃物が散らばり、症状が慢性化する恐れもあります。
粉瘤はニキビとは異なり、自然治癒が期待できないため、早期発見と適切な治療が重要です。気になる症状がある場合は、早めに医療機関を受診することをおすすめします。
脂肪腫(リポーマ)
脂肪腫(リポーマ)は、皮下に生じる良性腫瘍の一種です。柔らかい部位に発生する良性腫瘍の中で最も頻繁に見られます。
発症部位は全身に及びますが、特に背部や肩、頚部(特に後頚部)に多く、上腕、臀部、大腿などの四肢にも現れることがあります。症状としては、皮膚の盛り上がりや柔らかいしこりが特徴的で、通常、痛みやかゆみはありません。脂肪腫の大きさはさまざまで、数ミリ程度のものから10センチ以上に及ぶものまであります。
放置すると徐々に成長し、目立つようになります。発症原因は、肥満や糖尿病、遺伝的要因などが関与していると考えられていますが、詳細な原因は分かっていません。
脂肪腫は内服薬や外用薬では効果がなく、注射器での吸引もできないため、根治には摘出手術が必要です。脂肪腫が大きくなると手術や費用の負担が増えるため、早期発見・早期治療が重要です。
良性腫瘍である一方、外見や症状が類似した悪性腫瘍も存在するため、小さなしこりでも発見次第、速やかに専門医の診察を受けることが重要です。
石灰化上皮腫(毛母腫)
石灰化上皮腫は、皮下にできる良性腫瘍の一種です。この腫瘍は、毛穴の深部にある毛母(もうぼ)細胞の石灰化によって発生します。
しこりは硬く、主に顔や首、腕などに発生し、その大きさは通常0.5~3センチ程度です。外見は水ぶくれのように見え、大きくなると皮膚が薄い部分では黄白色や青黒い色に見えることがあります。
多くの場合は無症状ですが、圧迫されると痛みやかゆみを感じることがあります。また、細菌感染や異物反応を起こすことがあり、その際には痛みやかゆみが強くなり、場合によっては皮膚に穴が開いてしまうこともあります。このような場合、早急に手術を受けて完全に除去することをおすすめします。
石灰化上皮腫は、子どもや女性に比較的多くみられますが、正確な原因は不明です。また、丸い形状のため、粉瘤や脂肪のかたまりと間違えられることがよくあります。
ほくろ
ほくろは良性腫瘍の一種で、メラニン色素を作るメラノサイトが集まることで、皮膚に黒色斑が形成されます。形状や色はさまざまで、円形や楕円形、平らなものから隆起したもの、茶色から黒色まで幅広いバリエーションがあります。
多くの人にほくろは見られ、それがチャーミングポイントとなることもありますが、まれに悪性のケースもあるため、異変が現れた場合は注意が必要です。
ほくろと皮膚がんの区別は難しく、診察では患者様の症状や状況を詳しく聞き取り、慎重に検査を行う必要があります。検査では、ダーモスコピーという特殊な拡大鏡を使用します。悪性の可能性が高いと判断された場合は、手術で切除し、病理検査によって最終診断を行います。
ほくろに気になる変化を感じたり、皮膚がんの特徴に似ていると思われる場合は、早急に医療機関での診断を受けることをおすすめします。
イボ
イボは、数ミリから数センチの盛り上がりとして皮膚に現れるできもので、ウイルス感染や加齢など、さまざまな原因で発生します。見た目や大きさもさまざまで、場合によっては日常生活に影響を及ぼすことがあります。
放置すると大きくなるタイプのイボもあるため、早期の対応が重要です。イボが大きくなると治療が難しくなることがあるため、気になる場合はお早めにご相談ください。
主なイボの種類
イボ(尋常性疣贅:しんじょうせいゆうぜい)
尋常性疣贅は、イボの中で最も一般的なもので、形状はさまざまです。皮膚にできた傷から「ヒトパピローマウイルス(HPV)」と呼ばれるウイルスが感染することが主な発症原因です。
尋常性疣贅は、基本的に痛みやかゆみはありませんが、放置すると数が増えたり、周囲に感染することがあります。
水イボ(伝染性軟属腫:でんせんせいなんぞくしゅ)
水イボは、「ポックスウイルス」と呼ばれるウイルスが原因で発症するイボです。数ミリ程度の小さな隆起として現れ、表面は光沢を帯びたドーム状になっています。6歳以下の子どもに多くみられ、胸やお腹、脇の下などの皮膚の薄い部位に現れやすいのが特徴です。
水イボを掻くと内容物が拡散し、周囲に感染する可能性があるため注意が必要です。特に保育園や幼稚園など、集団生活の場では感染が広がりやすいため、早期の治療が推奨されます。
老人性イボ(脂漏性角化症:しろうせいかくかしょう)
老人性イボは、中年以降に頻発するイボですが、若年層での発症も珍しくありません。
紫外線による肌の加齢性変化が主な原因とされており、顔や頭部、胸元などに好発します。茶褐色や黒褐色の円形隆起として現れ、加齢に伴ってその数が増える傾向があります。
首イボ(アクロコルドン)
首イボは、非感染性の脂漏性角化症が原因で、皮膚が薄い首や脇の下、鼠径部に生じる小さな有茎性のイボです。
首イボ自体で大きな問題が生じることは少ないですが、衣服の摩擦やねじれによって痛みや炎症を伴う場合があります。
皮膚線維腫
皮膚線維腫は良性腫瘍の一種で、主に成人女性の腕や足に現れる皮膚病変です。皮下に硬いしこりを感じることがあり、肌色や茶色などの色をしています。
痛みやかゆみなどの症状はほとんどありませんが、患部をつまむと痛みを感じたり、衣服との摩擦で不快感を覚えることがあります。皮膚線維腫の原因は明らかになっていませんが、虫刺されや傷、遺伝的要因が関与していると考えられています。
多くの皮膚線維腫は経過観察で十分ですが、大きいものや数が増えている場合、まれにDFSP(隆起性皮膚線維肉腫)という悪性腫瘍の可能性があります。その場合、悪性腫瘍の鑑別が必要となり、病理検査が行われます。
外骨腫(がいこつしゅ)
外骨腫は良性腫瘍の一種で、原発性骨腫瘍の中で最も発生頻度が高いとされています。この腫瘍は、骨幹端部にツノのように膨隆し、表面が軟骨で覆われているのが特徴です。そのため、「骨軟骨腫(こつなんこつしゅ)」とも呼ばれます。
形成外科領域では、爪の下や前額部(おでこ)、頭蓋によく見られますが、痛みを伴うことはまれです。しかし、見た目に問題が生じるため、前額部や頭蓋に発生した場合には、切除を希望する患者様が多くおられます。
治療では、主に手術による摘出が行われます。局所麻酔下で行われ、ツチとノミを使用して腫瘍を取り除きます。摘出後の組織は病理検査を行い、創部を目立たないように細かい縫合が施されます。
ガングリオン
ガングリオンとは、関節包内の滑液(かつえき)が漏れ出すことで皮下にできる袋状の腫瘤のことです。多くは手首の関節近くに発生しますが、指の付け根の腱鞘にも生じることがあります。
手首の関節には関節を包む関節包があり、その中は潤滑油としての役割を果たす滑液で満たされています。この滑液が何らかの理由で外に漏れ出し、袋状の腫瘤を皮下で形成します。
ガングリオンの大きさはさまざまで、米粒大からピンポン玉ほどまで成長するケースもあり、硬さも柔らかいものから固いものまで多様です。通常、激しい痛みを伴いませんが、神経を圧迫すると痛みが生じる場合があります。
治療法としては、保存療法や外科的摘出が主な選択肢です。注射によって内容物を吸引する穿刺吸引を行っても再発を繰り返す場合は、手術による除去が検討されます。
神経線維腫(しんけいせんいしゅ)
神経線維腫は、皮膚や皮下組織にできる良性腫瘍の一種です。多くの場合、思春期頃から徐々に現れはじめ、年齢を重ねるにつれて数が増える傾向にあります。見た目は常色から淡い紅色で、感触は柔らかく、大きさにはばらつきがあります。
神経線維腫には、単発性と多発性の2種類があり、多発性の場合は神経線維腫症Ⅰ型(レックリングハウゼン病)の可能性を考慮する必要があります。
目立った症状がなく、悪性化することもありませんが、見た目の理由で摘出を希望される方が多く、その際は外科的切除が行われます。
神経鞘腫(しんけいしょうしゅ)
神経鞘腫は、神経を包む神経鞘(神経のさや)に発生する良性腫瘍の一種です。抹消神経のシュワン細胞が下になっていることから、「シュワン細胞腫」とも呼ばれています。皮下組織や筋肉などの軟部組織に好発しますが、脳や脊髄、消化管にも発生することがあります。
症状は発生部位によって異なりますが、皮下に生じると圧迫による痛みが現れることがあります。その場合は外科的な治療が検討されます。ただし、重要な神経に関わる場合は、術後の神経障害リスクを考慮し、慎重なアプローチが必要です。
脂腺母斑(しせんぼはん)
脂腺母斑は先天性の皮膚奇形で、思春期頃から目立ちはじめます。初期段階では周囲の肌と同じ色をしているため、気づきにくいことが多いですが、成長とともにイボ状に変化し、黄色っぽいあざのような見た目になります。
頭部に発生すると、脱毛斑に見えることもあります。表面の質感はザラザラしている場合もあれば、平坦な場合もあります。30歳を過ぎると、まれに悪性腫瘍化するリスクがあるため、小中学生以降での切除が検討されます。
表皮母斑(ひょうひぼはん)
表皮母斑は、表皮の過剰増殖によって生じる「あざ」です。出生時または生後2〜3か月頃から発生し、頻度としては新生児の1000人に1人の割合とされています。明確な発症原因は分かっていません。表皮母斑は褐色で、表面がザラザラしており、首や体幹、手足に発生しやすく、帯状に広がるのが特徴です。
表皮母斑は自然に消えることはなく、むしろ徐々に広がる傾向があるため、治療が必要です。主な治療法としては、外科的切除や、メスによって表皮の浅層を削り取る方法があります。
悪性のできものは早めの対処を
「できもの」には良性腫瘍が多いですが、中には悪性腫瘍が潜んでいる可能性があるため、注意が必要です。
良性と悪性を見分けるポイントとして、硬さや表面の状態などがあげられますが、明確な判断には専門医による診断が必要です。決して自己判断をせず、必ず医療機関を受診してください。
当院のできもの治療の特徴
当院では、患者様一人ひとりの状態を慎重に評価し、その方に合った治療法をご提案いたします。手術前の綿密な検査と問診を通じて、できものの状態を正確に把握し、丁寧なインフォームド・コンセント(説明と同意)を行います。
できものに関する不安や疑問をお持ちの方は、ぜひ当院にご相談ください。