古林形成外科-札幌院

医療コラム

粉瘤手術の「くり抜き法」とは?手術手順を形成外科専門医が解説

粉瘤のくり抜き法は、粉瘤の中心に小さな穴を開けて、内容物と再発の元となる袋を取り出す手術法です。

傷が小さく済みやすく、術後の回復も早いため、顔や首、おしりなど目立つ部位にできた粉瘤や、できるだけ跡を残したくない方に選ばれています。

当院でも、

  • 粉瘤の大きさ
  • 粉瘤の状態
  • 患者さまのご希望

に合わせて、くり抜き法を積極的に採用しています。

今回はくり抜き法の特徴と切開法との違いを中心に解説していきます。

粉瘤治療のくり抜き法とは?

くり抜き法は、皮膚トレパン(デルマパンチ)と呼ばれる円形の器具で皮膚を小さく丸くくり抜き、そこから粉瘤の中身と袋を順番に引き出す治療法です。

メスで大きく切開する方法とは異なり、粉瘤を小さくしてから取り出すため傷を最小限に抑えられるのが最大の特徴です。

▲様々なサイズのトレパンを常備。お客様に合わせて使い分けています▲

開ける穴の大きさは粉瘤のサイズにもよりますが、非常に小さく、縫わずに済むことも多いため、術後の違和感が少なく、通院の手間も最小限で済みます。皮膚トレパンは1mm径のものから10mmを超えるものまで選択でき、粉瘤の大きさに合わせて使用されます。

術後の回復が早く、仕事や家事にも早く復帰できるケースが多いため、

  • 早く治したい
  • 目立たないように治したい

という方に適しています。

当院でも、顔・首・背中・おしりなど、見える場所や摩擦の多い部位にできた粉瘤については、患者さまのご希望に応じてくり抜き法を積極的にご提案しています。

特に「なるべく傷を残したくない」という声は非常に多く、再発リスクや部位の状態を見ながら、最適な方法をご案内しています。

当院の手術では9割以上の方がくり抜き法の適応となります。とにかく傷を小さく手術を終えたい方、手術の負担を小さくしたい方向けになるからです。

粉瘤くり抜き法の手術手順

くり抜き法は、局所麻酔で行う日帰り手術です。

当院での一般的な流れは以下の通りで、所要時間は15~30分ほど。その場で歩いてお帰りいただけます。

くり抜き法の手術手順

  • 局所麻酔
  • トレパンで皮膚をくり抜く
  • 内容物と袋の摘出
  • 洗浄・止血・必要に応じて縫合
  • ガーゼで保護し、術後説明

1. 局所麻酔

粉瘤の周囲に麻酔を注射し、手術中に痛みが出ないようしっかりと効かせます。場所によってはブロック麻酔を使って痛みを軽減した上で手術部位に麻酔をします。

局所麻酔には、ボスミンが入っているため、血管収縮作用により皮膚の血流が止まり、一時的に組織が白くなります。

局所麻酔にボスミンが入る理由としては、

  • 血管収縮作用により、術中の出血を減らせる
  • 組織の血流を止めることにより、麻酔薬が長く留まり、持続時間が伸びる
  • ボスミンを入れることでそこに長く麻酔薬が留まってくれるので、極量(麻酔を使用できる量)を増やすことができる

また、麻酔にメイロンを混ぜてPHを調整し、痛みを大幅に軽減しています。麻酔針も極細のものを使い、体への負担を下げています。

2. トレパンで皮膚をくり抜く

粉瘤の開口部を中心に、専用の丸い器具(トレパン)で小さな穴を開けます。穴の大きさは5mm程度が一般的です。

3. 内容物と袋の摘出

中にたまった皮脂や角質を丁寧に取り出し、その後袋(嚢胞)を微細なセッシで把持し、ハサミを使って剥離しゆっくりと引き抜きます。この袋を内容物を含め全てきちんと取り切ることが再発予防のポイントです。

今回は内容物を押し出し、ある程度中身を出して小さくしてから中の袋を取り出します。

4. 洗浄・止血・必要に応じて縫合

取り出し後は患部を洗い、出血がなければそのまま閉じることが多いですが、傷の大きさや部位によっては止血操作、縫合を加える場合があります。

止血にはバイポーラという電気止血器を使用し、内部が死腔(空洞状態)になっている場合は血が溜まりやすいため皮下脂肪同士を縫合して血腫を予防します。

5. ガーゼで保護し、術後説明

創部を清潔なガーゼで保護し、ご自宅でのケア方法・注意点をお伝えして終了です。

術後は強い痛みが出ることはほとんどなく、多くの方が翌日から通常の生活(仕事・家事など)に戻っています。

ただし、入浴や激しい運動などは数日控えていただく場合があります。

粉瘤手術を動画で解説しています>>

粉瘤くり抜き法に寄せられるQ&A

くり抜き法を受けたら、もう再発しませんか?

袋をしっかり取りきれた場合、再発のリスクはかなり低く抑えられます。

ただし、粉瘤が皮膚の深い層に入り込んでいたり、癒着がある場合は袋の一部が残ることもあり、再発の可能性はゼロではありません。

当院では事前診察で粉瘤の状態を確認し、くり抜き法で対応可能かどうか慎重に判断しています。

粉瘤治療のくり抜き法の再発が多いと言われる理由

くり抜き法の傷跡は残りますか?目立ちますか?

くり抜き法では直径5mm前後の小さな穴から粉瘤を摘出するため、傷跡は非常に目立ちにくいのが特徴です。

ただし体質や部位によっては、術後に一時的な赤みや色素沈着が見られることもありますが、時間の経過とともに目立たなくなる方がほとんどです。

くり抜き法による手術は痛いですか?麻酔は効きますか?

手術中は局所麻酔をしっかり効かせてから行うため、痛みはほぼ感じません。

麻酔の注射に少しチクッとした感覚がありますが、処置中は無痛です。術後も軽い違和感や鈍い痛み程度で、強い痛みを訴える方は少数です。

くり抜き法にもデメリットはありますか?

はい、いくつか注意点があります。粉瘤の袋が完全に取り出しにくい構造をしている場合や、炎症で癒着している場合は、くり抜き法では対応しきれないことがあります。

その場合は、切開法のほうが確実かつ安全に取り除けるため、当院では状態に応じて方法を選択しています。

術後、シャワーや入浴はいつから可能ですか?

当日から軽いシャワーは可能です。患部を濡らさないようにガーゼで保護していただければ問題ありません。

ただし、湯船に浸かるのは出血や感染リスクを避けるため、1~2日程度控えていただくようお願いしています。

くり抜き法でも縫ったり縫わない場合もあるのでしょうか?

はい、くり抜いた穴の大きさや粉瘤の深さによって判断されます。

傷が小さく、自然にふさがると判断される場合は縫合しませんが、場所や出血の状態によっては1~2針縫うケースもあります。

切開法とくり抜き法で費用は違いますか?

どちらも保険診療で対応できる手術のため、費用に大きな差はありません。

粉瘤の大きさや処置内容に応じて多少の差が出る場合はありますが、事前に診察時に明確な金額をご説明しますのでご安心ください。

当院の粉瘤手術にかかる全ての費用>>

まとめ

くり抜き法は、粉瘤をなるべく目立たない形で取り除きたい方にとって、負担の少ない治療法のひとつです。

小さな傷で済みやすく、術後の回復も早いため、日常生活に支障を出したくない方や、顔・首・おしりなど目立つ部位にできた粉瘤に悩む方にも選ばれています。

ただし、すべての粉瘤がくり抜き法で対応できるわけではありません。

炎症を起こしていたり、粉瘤が大きい場合には、確実に取り除くために切開法を選んだ方が安全で再発も防ぎやすくなります。

当院では、くり抜き法・切開法の両方に対応しており、粉瘤の状態や部位、患者さまのご希望をしっかり伺ったうえで、最適な治療法をご提案しています。

「なるべく傷を残したくない」「痛みやダウンタイムを少なくしたい」「なるべく早く治したい」といったお悩みがあれば、まずはお気軽にご相談ください。

この記事を書いた人

著者画像
北海道皮膚のできものと粉瘤クリニック 札幌院 院長 荻野 航太

北海道皮膚のできものと粉瘤クリニック古林形成外科 札幌院では、皮膚疾患を専門とする日本形成外科学会認定の形成外科専門医が診療を担当しています。当院では、粉瘤、脂肪腫、耳垂裂などの疾患に対応した日帰り手術をはじめ、形成外科全般の診療を行っています。

北海道皮膚のできものと粉瘤クリニック古林形成外科 札幌院では、皮膚疾患を専門とする日本形成外科学会認定の形成外科専門医が診療を担当しています。当院では、粉瘤、脂肪腫、耳垂裂などの疾患に対応した日帰り手術をはじめ、形成外科全般の診療を行っています。

医療コラム一覧へ戻る
WEB予約
電話アイコン 電話予約
カレンダーアイコン WEB予約
トップぺ戻る