炎症性粉瘤の治療は古林形成外科札幌院

炎症性粉瘤

炎症性粉瘤とは

炎症性粉瘤は、通常の粉瘤に炎症が起こり、腫れや痛みを伴う状態を指します。患部には赤みや熱感が現れ、炎症や化膿が進行すると、発熱や倦怠感などの全身症状が出ることもあります。

炎症性粉瘤は、顔や手足など目立ちやすい場所にできることが多いですが、背中や首などの見えにくい部位に発症すると、初期段階では気づかない場合もあります。

炎症の主な原因は細菌感染と異物反応

炎症を引き起こす原因としては、細菌感染と異物反応が挙げられます。

通常、皮膚表面には常在菌が存在し、肌を守る役割を果たしていますが、粉瘤という特殊な環境下では、これらの細菌が急激に増殖することがあります。細菌が急激に増殖すると、人体の免疫が細菌を排除しようと防衛反応を起こし、その結果として炎症が発生します。

また、粉瘤の袋状組織が破裂し、内部の老廃物が皮膚内に漏れ出すこともあります。この異物が体内に存在すると、体は異物反応を起こし、痛みや腫れ、熱などの炎症症状が現れることがあります。

以前は、粉瘤の炎症の主な原因は細菌感染と考えられていましたが、実際には細菌感染の頻度は低く、異物反応による発症が多いとされています。

炎症性粉瘤

炎症性粉瘤による痛み

粉瘤に炎症が生じると、痛みを伴い、元のサイズの何倍にも腫れ上がることがあります。特に、関節部分やデリケートな部位に発症した場合、腫れによって腕や足の動きが制限され、激しい痛みを引き起こすことがあります。

炎症が進行して化膿すると、痛みがさらに悪化し、睡眠を妨げるほど強くなることもあります。炎症性粉瘤による痛みの感じ方には個人差があり、触れただけで痛む方もいれば、触れなくても痛みを感じる方もいます。

炎症性粉瘤のリスクと早期治療の重要性

炎症性粉瘤を放置すると、炎症が進行し腫れが大きくなるだけでなく、全身に細菌が広がる恐れがあります。その結果、発熱や強い痛みが現れることもあります。

さらに、炎症が進行すると、膿がたまった袋状組織が破裂し、強烈な悪臭を放つほか、周囲の皮膚組織が壊死するリスクも高まります。

壊死した組織は色素沈着や瘢痕として残る可能性があり、治療後も影響が続くことがあります。これらのリスクを避けるためにも、炎症性粉瘤は早期治療が不可欠です。

炎症性粉瘤の主な治療

炎症性粉瘤の治療には、主に以下の3つがあります。

  • 抗生物質の内服
  • 切開排膿処置
  • 摘出手術

抗生物質の内服

炎症性粉瘤の治療には、抗生物質を使用することがあります。ただし、粉瘤の内部には血管が通っていないため、抗生物質の有効成分が炎症部位まで届きにくいという課題があります。特に、大きな粉瘤の場合、内服による治療効果は限定的であり、期待したほどの結果が得られないことが多いです。

それでも、細菌感染が原因である可能性があるため、放置すると感染リスクが高まります。このため、感染予防や症状の悪化を防ぐためにも、抗生物質の使用が必要になる場合があります。

切開排膿処置

粉瘤を切開して、中にたまっている老廃物や膿を排出(排膿)します。この処置により、炎症や腫れを一時的に抑えることができます。しかし、再発の可能性や痛みが残る恐れがあるため、処置後は経過観察が必要です。

手術による摘出

当院では、炎症性粉瘤に対して日帰りの摘出手術を行っています。これは、抗生物質の内服や切開排膿処置だけでは根本的な治療が難しいためです。

炎症がある場合、粉瘤の袋状組織と皮膚が癒着していることがありますが、可能な限り摘出を試みます。炎症の期間が短ければ、袋状組織をひと塊で摘出できる可能性が高まります。しかし、炎症が長引くと摘出が困難になり、再発リスクも高くなるため、早期の手術をおすすめしています。場合によっては、まず切開排膿処置を行い、症状が落ち着いてから摘出手術を提案することもあります。

手術後の通院は、基本的に1カ月後の再診のみで、毎日通う必要はありません。

炎症の有無による手術の違い

粉瘤は、炎症の有無によって手術の難易度や傷あとの状態、さらに手術後の痛みの程度が大きく異なります。

手術の難易度

炎症性粉瘤の場合、通常の粉瘤と比べて、袋状の組織(被膜)をまとめて摘出するのが難しい傾向にあります。被膜の一部が体内に残ると、再発のリスクが高まります。

傷あとの綺麗さ

粉瘤に炎症が生じると、組織が壊死し、周辺組織の治癒が遅れるほか、色素沈着のリスクが高まります。さらに、瘢痕が形成され、皮膚表面に陥凹(へこみ)が生じることもあります。

これらの症状は、炎症の程度が強かったり、期間が長引いたりするほど起こりやすくなります。特に、皮膚の陥凹に対する治療は非常に難しくなります。

痛みの程度

炎症によって組織が損傷すると、以下の物質が生成され、痛みが引き起こされやすくなります。

  • ブラジキニン
  • ATP
  • プロトン
  • プロスタグランジン

局所麻酔の効果が弱まる原因の一つとして、炎症部位のpH変化が挙げられます。炎症が激しい場合、組織がアシドーシス(酸が過剰に存在している状態)になり、塩基性の麻酔薬であるキシロカイン(局所麻酔薬)の効果が低下する可能性があります。

その結果、手術時の局所麻酔が効きにくく、痛みが強く感じられることがあります。当院では、このような状況に対応するため、炎症周囲に十分な量の局所麻酔薬を投与し、できるだけ痛みを軽減するよう努めています。

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