古林形成外科-札幌院

医療コラム

胸にできた治らないしこりの正体!粉瘤と乳がんの違い

胸にしこりを発見した場合「もしかして乳がんかも」と不安になる方も多いかも知れませんが、皮膚の浅い部分にある場合は粉瘤の可能性が高いです。

初めは小さなしこりでも年月と共に大きくなるためがんなんじゃないかと不安になりますが、特に胸は皮脂腺が多く摩擦や圧迫が起こりやすい部位のため粉瘤ができやすい部位でもあります。

「黒い点が見える」「しこりがあるけど痛くない」「押すと少し動くような感じがある」──このような症状がある場合は、粉瘤の典型的なサインである可能性があります。乳腺腫瘍や脂肪腫、乳がんなど他の疾患との見分けがつきにくいこともあるため、早期に形成外科や皮膚科での診察を受けることが、傷跡を最小限に抑える治療の第一歩です。

この記事では、胸にできる粉瘤の特徴やよくある症状、他の腫瘤との違い、手術方法と費用などを詳しく解説します。

胸できる粉瘤の特徴

  • 黒い点・塊ができる
  • 腫れ(炎症)・化膿・押すと痛い・かゆみ
  • 中身が破裂・膿、血が出る

黒い点・塊ができる

胸にできる粉瘤では、表面に黒い点が見える場合があります。これは毛穴の開口部に皮脂や角質が詰まり、内部の嚢胞と皮膚がつながっているサインです。

デコルテからバスト上部にかけては皮膚が比較的薄く、皮脂腺が多いため毛穴が詰まりやすい構造になっています。そのため、皮膚の下に袋状の構造(嚢胞)ができやすく、粉瘤が発生しやすい環境といえます。

この「黒い点」は粉瘤の入り口ともいえるもので、表面上は小さく見えても、皮下には直径数センチのしこりが広がっているケースもあります。また、胸元は下着や衣類との接触・摩擦が多いため、外的刺激によって粉瘤が炎症を起こしやすいのも特徴です。

見た目には目立たなくても、触れるとゴリっとした塊がある、徐々に大きくなっているといった場合は、早めに専門医を受診することが望まれます。

腫れ(炎症)・化膿・押すと痛い・かゆみ

胸にできた粉瘤は、炎症を起こすと赤く腫れ、押すとズキズキとした強い痛みを伴う「炎症性粉瘤」に変化することがあります。実は胸部は、粉瘤が悪化しやすい条件が揃っている部位です。

ブラジャーの締めつけやワイヤーの圧迫、洋服のこすれによって物理的刺激が日常的に加わるうえ、汗がたまりやすく細菌が繁殖しやすい環境でもあるため、炎症や感染が起こりやすくなっています。

初期には軽いかゆみや違和感から始まることもありますが、炎症が進むと皮膚が熱を帯び、膿がたまり膿瘍(のうよう)となり、皮膚が張って破れるリスクもあります。バストのふくらみ自体が皮膚にテンションをかけているため、他の部位よりも裂けやすく、痛みが強く出やすいのも特徴です。

特にブラジャーが当たる位置に粉瘤がある場合、刺激を繰り返すことで急激に悪化するおそれがあるため、「赤く腫れてきた」「熱感がある」と感じたら早期の診察・処置が重要です。

しこり・触ると硬い

「触れるとしこりがあるけど、痛みはない」――そんなとき、粉瘤の可能性があります。特に胸まわりでは、乳腺や脂肪組織が豊富に存在するため、良性腫瘍との鑑別が難しい部位でもあります。

粉瘤は、皮膚の下に袋状の構造(嚢胞)ができ、そこに皮脂や角質などの老廃物が蓄積することで、ゴリゴリとしたしこりとして触れるようになります。押すとわずかに動くのが特徴で、数ミリから数センチまで徐々に大きくなる傾向があります。

特にバスト周辺では、ブラジャーの圧迫や就寝時の体勢で刺激を受けやすく、それによってしこりが硬く感じられたり、急に違和感が強まることも少なくありません。

こうした変化に気づいたときには、自己判断せず、粉瘤の診断・治療に詳しい医師の診察を受けることが、適切な治療や早期の対処につながります。

中身が破裂・膿、血が出る

皮膚表面が薄く、衣類の圧迫や摩擦を受けやすい胸部では、粉瘤が進行すると内部の嚢胞が破裂しやすくなります。破裂時には、白く粘り気のある皮脂・角質の塊や膿、血液が皮膚の外に出てきて、強い悪臭を放つこともあります。

一見、内容物がすべて出たように見えても、皮下の嚢胞(袋)が残っていれば再発は避けられません。むしろ、破裂後は周囲の組織と癒着しやすくなるため、後からの摘出手術が難しくなったり、傷が大きく残るリスクが高まります。

胸まわりは日常的に刺激を受けることが多いため、破裂や化膿を防ぐためにも、違和感やしこりに気づいた段階で早めに受診し、適切な処置を受けることが望ましいです。

胸にできる粉瘤に似たできものとの違い

  • ニキビ・角栓
  • 脂肪腫
  • おでき(せつ)
  • がん

ニキビ・角栓

ニキビや角栓は、毛穴に皮脂や角質が一時的に詰まることで生じ、数日から1週間程度で自然に改善することが多いものです。特に胸元は皮脂腺が多いため、小さな吹き出物ができやすい部位でもあります。

一方で粉瘤は、皮膚の下に嚢胞(袋状構造)が形成され、内部に老廃物が慢性的に蓄積していくため、自然に消えることはありません。また、粉瘤は黒い点(開口部)を伴うことがあり、しこりが触れるなど、皮膚の奥に存在する特徴があります。

表面だけのブツブツか、皮膚の下に芯のあるしこりか。そこが大きな違いのひとつです。

脂肪腫

脂肪腫は脂肪細胞が増殖してできる良性腫瘍で、触るとやわらかく、皮膚の深い層にあるのが特徴です。基本的に痛みや炎症を伴わず、成長も比較的ゆっくりです。

粉瘤は触ると弾力があり、押すと動くしこりがある点では似ていますが、黒い点(開口部)や臭いのある排出物、炎症のリスクがある点で異なります。特に胸元にできた粉瘤は、衣類との摩擦で悪化しやすく、脂肪腫よりも変化が早い傾向があります。

おでき(せつ)

おできは毛穴に細菌が感染し、急激に腫れて強い痛みと発赤を伴う急性炎症性疾患です。しばしば膿をもち、押すと激しい痛みが出るのが特徴です。

粉瘤は慢性的に進行し、炎症がなければ痛みはありませんが、二次感染を起こすとおできに非常によく似た状態(炎症性粉瘤)になることがあります。急に腫れたものはまず「おでき」、徐々に大きくなったものは「粉瘤」の可能性を疑うのが目安です。

がん

皮膚がんや乳腺に発生する腫瘍など、悪性の可能性も念頭に置く必要があります。がんなどの悪性腫瘍は、急速に大きくなったり、色の変化、出血、ただれなどを伴うことがあり、粉瘤とは進行の速さや表面の変化で見分けられることがあります。

とはいえ、粉瘤も大きくなったり炎症を起こしたりするため、自己判断は非常に危険です。特に胸部にしこりがある場合は、粉瘤か腫瘍かを見極めるためにも、皮膚科や形成外科での診察が不可欠です。

胸の粉瘤の治し方|薬では根治しません

粉瘤を治したいと思ったとき、「塗り薬や抗生物質で何とかなるのでは…」と考える方も少なくありません。しかし結論から言えば、粉瘤は薬だけでは根本的に治すことはできません。

なぜなら、粉瘤は皮膚の下に「嚢胞(のうほう)」と呼ばれる袋状の構造ができ、その中に皮脂や角質が溜まっていくことで形成される良性腫瘍だからです。いくら表面の炎症が治まったように見えても、袋自体が残っている限り、再発を繰り返してしまいます。

そのため、根本治療には手術による摘出が必要となります。当院では、症状や粉瘤の大きさ・位置に応じて、以下の2種類の手術法を選択しています。

くり抜き法(トレパン法)

トレパンという専用の器具で、粉瘤の中心に小さな穴を開け、そこから中身と袋を引き出す方法です。

・5~7mm程度の小さな傷で済む

・縫合が不要な場合が多く、術後の違和感も少ない

・胸のように見た目や衣類との接触が気になる部位に適している

比較的小さくて炎症のない粉瘤に適応されるケースが多く、術後のダウンタイムも短いため、患者様の負担を軽減できる治療法です。

当院の「くり抜き法」の詳しい説明>>

切開法(通常の摘出手術)

皮膚を切開し、嚢胞(袋)をしっかり視認しながら丁寧に摘出する方法です。

・炎症性粉瘤や再発を繰り返すタイプ、大型の粉瘤に適応

・再発リスクが最も低く、安全性が高い

・術後は縫合を行うこともありますが、胸の皮膚のラインに沿って傷を目立ちにくく仕上げます

粉瘤が大きい、皮膚との癒着がある、炎症が強いといった場合には、くり抜き法よりも確実性の高い切開法が選ばれます。

当院の「切開法」の詳しい説明>>

胸の粉瘤の手術費用はいくらかかるのか徹底解説

粉瘤の手術は健康保険が適用される外科処置のひとつです。費用は粉瘤の大きさや状態、使用される手術法、麻酔の有無、病理検査の実施の有無などによって変動しますが、目安は以下の通りです。

【3割負担の方の場合の目安】

・小さい粉瘤(3cm未満)…約4,000~6,000円前後

・中~大きい粉瘤(3cm以上)…約6,000~10,000円前後

・炎症を伴い排膿処置が必要な場合…+数千円程度

別途、初診料や処方薬、ガーゼ処置、病理組織検査代などがかかることもあります。正確な費用は診察時の状態や治療内容に応じてご説明いたしますので、事前にご不安な点は遠慮なくご相談ください。

当院の粉瘤手術の詳しい料金>>

胸の粉瘤に寄せられるQ&A

胸の谷間に粉瘤が出来たので手術しようと思うのですが、胸の谷間の局所麻酔は他の部位と比べて痛いのでしょうか?

局所麻酔の注射による痛みは、どの部位でも多少の刺激はありますが、胸の谷間は比較的皮膚が薄く、神経が密集しているため「チクッ」と感じやすい部位ではあります。ただし、麻酔薬をゆっくりと注入するなどの痛みを軽減する工夫をしているクリニックも多く、我慢できないほどの痛みではないという方がほとんどです。

不安がある場合は、あらかじめ医師に伝えておくと、麻酔方法を調整してくれることもあります。

胸の粉瘤の手術後ブラジャー(下着)はつけられますか?

術後すぐに締め付けの強い下着をつけるのはおすすめできません。特にワイヤー入りのブラジャーや圧迫感の強いインナーは、傷の治癒を妨げたり、刺激によって炎症を引き起こすことがあります。

帰宅時など、どうしても下着が必要な場合は、綿素材でゆったりとしたスポーツブラやノンワイヤーブラが適しています。術後1~2日はノーブラで過ごし、圧迫が落ち着いてから軽いブラに切り替えるなど、医師の指示に従って対応するのが安心です。

生理前に胸が張って、しこりを感じました。乳がんと粉瘤の症状が似ているようで不安です。これは病気でしょうか?

生理前はホルモンの影響で乳腺が張るため、一時的にしこりのように感じることは珍しくありません。ですが、「しこりとしてはっきり触れる」「左右差がある」「時間が経っても変わらない」という場合は、乳腺外科での診察をおすすめします。

粉瘤の場合は、皮膚のすぐ下に触れるしこりで、中心に黒い点があったり、動かすと皮膚と一緒に動くのが特徴です。一方、乳がんは皮膚の下の深い層にあり、可動性が少ないしこりとして感じられることが多いです。医師による超音波検査などでの鑑別が確実です。

数年前から胸にしこりがあり、粉瘤のようにも感じます。乳がんの可能性もありますか?

「痛みがほとんどない」「触ると皮膚のすぐ下にあり、動く」「数年大きさが変わっていない」という点からは、粉瘤や脂肪腫などの良性腫瘍が疑われます。ただし、乳がんの中には痛みのないものや、ゆっくり進行するタイプも存在します。特に乳房にできたしこりは、粉瘤との区別が難しいこともあるため、乳腺外科や形成外科での画像検査(エコーなど)による評価が重要です。

ご自身で判断せず、念のため専門医を受診することをおすすめします。

粉瘤の手術をした場合、胸の谷間のような目立つ部位では傷跡が残らないか心配です。

粉瘤の手術は袋ごと取り除く必要があるため、小さな切開は避けられません。ただし、形成外科では“傷跡が目立たないように仕上げる”ことを重視しており、皮膚のシワに沿った切開や極細の縫合糸の使用など、さ

まざまな工夫がなされます。

また胸の谷間は比較的皮膚がよく動く部位なので、他の部位と比べて傷跡が目立ちやすいケースも多いです。しかし術後のテープ固定や紫外線ケアなど、アフターケアをしっかり行えば、薄く目立たない仕上がりが期待できます。

心配な方は、術前に医師へ「できるだけ目立たないようにしてほしい」と希望を伝えておくと安心です。

まとめ

胸元は皮脂腺が多く摩擦や蒸れが起こりやすい部位であり、粉瘤ができやすく、かつ炎症を起こしやすい場所です。ブラジャーや衣類による圧迫やこすれが悪化要因となるため、気になるしこりや黒い点を見つけたら早めの診察が重要です。

粉瘤は自然に治ることはなく、根治には手術が必要です。当院では形成外科専門医が患者様一人ひとりの症状やご希望に合わせ、くり抜き法・切開法を選択し、傷跡や再発リスクを最小限に抑えた治療を行っています。

「小さなうちに治したい」「できるだけ傷跡を残したくない」

そう思われたら、ぜひお気軽にご相談ください。

この記事を書いた人

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北海道皮膚のできものと粉瘤クリニック古林形成外科 札幌院

北海道皮膚のできものと粉瘤クリニック古林形成外科 札幌院では、皮膚疾患を専門とする日本形成外科学会認定の形成外科専門医が診療を担当しています。当院では、粉瘤、脂肪腫、眼瞼下垂、耳垂裂などの疾患に対応した日帰り手術をはじめ、形成外科全般の診療を行っています。

北海道皮膚のできものと粉瘤クリニック古林形成外科 札幌院では、皮膚疾患を専門とする日本形成外科学会認定の形成外科専門医が診療を担当しています。当院では、粉瘤、脂肪腫、眼瞼下垂、耳垂裂などの疾患に対応した日帰り手術をはじめ、形成外科全般の診療を行っています。

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