粉瘤が出来やすい部位・場所の特徴と原因を形成外科専門医が解説

粉瘤は全身どこでも出来ますが、中でも出来やすい部位には共通する特徴や原因があります。
この記事では、粉瘤ができやすい部位とその背景について、わかりやすく解説します。
粉瘤が出来やすい部位・場所の特徴と原因

粉瘤は体のさまざまな部位にできますが、特定の場所に繰り返しできることもあります。ここでは、部位ごとの特徴を解説します。
- 陰部(デリケートゾーン)
- 顔
- 耳・耳たぶ・ピアス
- 首
- 脇
- 胸
- 背中
- おしり
順に解説していきます。
陰部(デリケートゾーン)

粉瘤は陰部(デリケートゾーン)にもできることがあり、特に繰り返しやすい部位のひとつです。この部位は、下着や生理用品、ナプキンなどによる摩擦や圧迫が日常的に加わる場所であり、同時に通気性が悪く、湿度が高くなりやすい環境でもあります。そのため、汗や皮脂がたまりやすく、雑菌の繁殖や毛穴の詰まりを引き起こしやすい状況が整ってしまいます。特に、皮膚が薄くデリケートであるため、炎症が起こると悪化しやすく、痛みや腫れを伴うケースも多く見られます。
また、VIO脱毛後の毛穴の炎症や、自己処理による肌トラブルがきっかけで粉瘤が発生することもあり、皮膚への刺激を避けることが粉瘤予防には欠かせません。
この部位に粉瘤ができると、「見えないから気づきにくい」「病院に行くのが恥ずかしい」といった理由から受診が遅れやすく、気づいたときには大きくなっていたり、感染してしまっていたりするケースもあります。
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顔

顔は皮脂腺が非常に多く、毛穴詰まりが起こりやすい部位のひとつです。そのため粉瘤ができやすい環境が自然と整っており、とくに頬・顎・鼻まわりなど、皮脂分泌の活発なゾーンに繰り返し粉瘤ができるケースが多く見られます。
粉瘤はニキビと間違われやすいのも特徴で、見た目が似ているうえに、初期段階では痛みがないことも多く、気づかずに放置してしまう人も少なくありません。しかし、粉瘤は皮膚の奥に袋状の構造を作ってしまうため、自然に治ることはなく、ニキビのように潰すと中の内容物が炎症を起こし、悪化してしまうリスクがあります。
また、顔にできた粉瘤は見た目が気になる部位でもあるため、早期に専門的な治療を受けることで傷跡を最小限に抑えることが可能です。とくに大きくなる前の段階で処置を行えば、傷口が小さく済むだけでなく、感染や腫れのリスクも大幅に軽減できます。
「ニキビが長引いている」「押すと芯のようなものがある」「繰り返し同じ場所にできる」そんな症状がある場合は、自己判断せず、粉瘤の可能性を疑って医師に相談することが大切です。
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頭

頭皮は顔と同様に皮脂腺が多く、汗や皮脂が溜まりやすい部位です。そのため、毛穴が詰まりやすく、粉瘤が発生しやすい環境にあります。さらに、髪の毛による物理的な刺激や、シャンプーやスタイリング剤の洗い残し・すすぎ残しが毛穴に蓄積することで、皮膚の下に老廃物が溜まり、粉瘤ができる原因となります。
頭皮の粉瘤は、髪に隠れて見つけにくく気づきにくいことが多いため、気づいた時にはすでに大きくなっていたり、化膿しているというケースも少なくありません。特に、洗髪時やブラッシング中に「しこりがある」「押すと痛みがある」と感じた場合は、粉瘤の可能性が考えられます。
また、頭皮は他の部位と比べて皮膚がやや硬く、一度できた粉瘤が自然に吸収されることはほとんどありません。放置すると徐々に大きくなり、感染を起こすと腫れや痛みが強くなり、切開排膿が必要になることもあります。
美容院やセルフケアで「できものがある」と気づいた際には、放置せず、皮膚科・形成外科などの専門機関で早めの診察を受けることが重要です。
耳・耳たぶ・ピアス

耳や耳たぶは皮膚が薄くデリケートな部位であり、外部からの刺激に弱い特徴があります。特にピアスを開けている場合、ピアスホールのケア不足や慢性的な炎症が原因で、粉瘤が発生するケースがよく見られます。
ピアス穴は常に皮膚が開いた状態であるため、皮脂・汗・古い角質・外部からの汚れが溜まりやすく、皮膚の下に袋状の構造(嚢腫)ができることで粉瘤へと進行してしまうことがあります。特に金属アレルギーや、合わない素材のピアスを装着していると、耳たぶが炎症を繰り返し、その刺激がきっかけで粉瘤ができやすくなります。
また、耳の裏や耳の付け根にも粉瘤ができやすく、髪の毛やマスクのゴムなどによる摩擦が原因になることもあります。耳は日常的に目が届きにくい部位のため、「いつの間にかしこりが大きくなっていた」「痛くなって初めて気づいた」というケースも少なくありません。
感染を防ぐためにも、ピアスホール周囲の清潔を保つこと、違和感を覚えたら早めに皮膚科や形成外科を受診することが大切です。自己判断で膿を出そうとすると悪化の原因になるため、専門的な処置を受けるのが安心です。
首

首は日常的に動きが多く、皮膚同士や衣類との摩擦が起きやすい部位です。また、汗をかきやすく、皮脂や汚れが溜まりやすいため、粉瘤ができやすい環境が整っています。
特に、シャツの襟や衣類のタグ、ネックレスやマフラーなどの小物による繰り返しの摩擦が、首の皮膚に小さな炎症や刺激を与え、それが引き金となって毛穴が詰まり、皮膚の下に老廃物が溜まることで粉瘤ができることがあります。
また、首まわりは皮膚が比較的薄くて柔らかいため、粉瘤ができた際にしこりとして触れやすく、早めに気づくことができる一方で、炎症が進行すると赤みや腫れが目立ちやすい場所でもあります。特に、髪の毛が長い方は、汗や汚れがたまりやすく、より注意が必要です。
脇

脇は太い毛があり、通気性が悪く、汗や皮脂が溜まりやすい部位であることから、粉瘤ができやすいエリアのひとつです。常に腕が体の側面に接していることで蒸れやすく、雑菌が繁殖しやすい環境が整っているため、毛穴の詰まりや皮膚トラブルが起きやすくなります。
また、デオドラントスプレーや制汗剤などの化学的な刺激が皮膚に負担をかけたり、カミソリや毛抜きによるムダ毛処理後の炎症が毛穴を傷つけたりすることで、皮膚の内部に老廃物が閉じ込められ、粉瘤が発生する原因になります。
脇にできる粉瘤は、初期は小さなしこりのように感じることが多いですが、炎症が起きると赤く腫れ上がり、痛みを伴う場合もあります。場所的に擦れやすく、放置すると化膿や破裂のリスクがあるため、自己判断で潰すのは絶対に避けるべきです。
「脇にしこりがある」「同じ場所が何度も腫れる」「ニオイのある分泌物が出る」などの症状がある場合は、粉瘤の可能性を疑い、専門の医療機関で早めに診察を受けることが推奨されます。
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胸

胸は皮脂腺が多く、皮脂分泌が活発な部位であることから、毛穴が詰まりやすく、粉瘤ができやすい部位のひとつです。特に、胸元は衣類との接触が多く、シャツや下着との摩擦、汗のこもりやすさなどが皮膚に継続的な刺激を与え、毛穴が炎症を起こす原因になります。
粉瘤は女性だけでなく、男性の胸元にもよくできるのが特徴です。特に、運動や汗をかく習慣がある人、肌着やスポーツウェアを長時間着用する機会が多い人は注意が必要です。男性の場合、乳輪やその周辺にも発生することがあり、「ニキビかな?」と見過ごしてしまうこともあります。
また、女性の場合はブラジャーやスポーツブラの締めつけや摩擦によって皮膚が刺激されることも粉瘤の一因になります。皮膚がやや柔らかく、汗をかきやすい体質の方は特に注意が必要です。
背中

背中は皮脂腺が多く、皮脂の分泌が活発なうえ、汗もかきやすい部位の一つであるため、粉瘤ができやすい場所としてよく知られています。特に、皮脂や古い角質が毛穴に詰まりやすく、そのまま皮膚の下に溜まって粉瘤へと発展するケースが多く見られます。
また、背中は自分の目が届きにくく、手も届きにくいことから、スキンケアや洗浄が不十分になりがちです。ボディソープやシャンプーのすすぎ残し、汗をかいたあとの放置などが、毛穴詰まりや炎症の原因となることもあります。
さらに、リュックや下着、寝具などによる長時間の摩擦や圧迫も、粉瘤を誘発する外的要因のひとつです。知らず知らずのうちに刺激が加わり、皮膚内部で袋状の構造が形成されてしまうと、粉瘤が徐々に大きく成長してしまう可能性があります。
おしり

おしりは粉瘤ができやすい部位のひとつであり、特に座る時間が長い人や、汗をかきやすい体質の人に多く見られます。椅子や下着との継続的な摩擦や圧迫が皮膚に刺激を与えることで、毛穴が詰まりやすくなり、粉瘤が発生する原因になります。
また、おしりは通気性が悪く、汗や皮脂がこもりやすい部位でもあるため、蒸れた状態が続くことで雑菌が繁殖しやすくなります。これにより、毛穴が炎症を起こし、皮膚の奥に老廃物が溜まって粉瘤が形成されてしまいます。
おしりにできた粉瘤は、座るたびに刺激が加わるため炎症が悪化しやすく、痛みや腫れが強く出やすいのが特徴です。また、位置的に見えにくいため発見が遅れやすく、気づいたときにはかなり大きくなっていたというケースも珍しくありません。
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足の付け根(鼠蹊部)

足の付け根(鼠蹊部)にしこりのようなふくらみを見つけ、「ニキビかな?」「下着がこすれて炎症を起こしたかも」と軽く考えて放置していませんか?しかしこの部位は、下着や衣類の摩擦・圧迫、汗や皮脂のたまりやすさ、通気性の悪さなど、粉瘤ができやすい条件がそろっているリスク部位のひとつです。
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まとめ
今回は粉瘤の出来やすい場所について解説してきました。
特に、顔・背中・耳・首・わきなどは粉瘤が発生しやすい場所として知られています。これらの部位は皮脂腺が多く、摩擦や刺激が加わりやすいのが特徴です。
体質や生活習慣、ホルモンバランスも粉瘤の発生に関与しています。日頃から肌を清潔に保ち、異変に早く気づくことが予防と早期対応の鍵になります。